犬系女子と飼い主系男子【梵天】

一緒に帰ろ ページ17

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痺れて身体が動かない。


気持ち悪くて吐きそう。



それでも喉の奥から懸命に、声を絞り出した。






『万次郎、殺しちゃだめ』






ゆらりと黒い肩が止まった。



男の顔は潰れ、ほとんど原型を留めていなかった。


それでもまだ息はあるようで、ほっとする。



万次郎は振り向かないまま、
あまりにも静かな声で問いかけてきた。






万次郎「……何で殺しちゃダメなんだ？」






のろのろとこちらを振り返る。


まるで奈落の底を垣間見たような、
ぞっとするほど暗く虚ろな目をしていた。






万次郎「オマエをそんな風に傷つけたヤツを、
何で庇うんだ」






たったひとり分の命でも、踏み止まってほしかった。


人を傷つけるたび、
彼までボロボロになっていくような気がして。



ご主人様を守るのも犬の役目なのだ。



安心させるように頑張って笑いかけた。






『平気だよ、ぜんぜん。
ちょっとくらくらするだけで。

守ってくれて、ありがとう』






万次郎が短く息を呑む。



両目を見開き、唇を震わせ、
吐息のような声で呼ばれた。






万次郎「A」






どんなお仕置きでも受けるから。



だから早く一緒に帰ろ。







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