検索窓
今日:7 hit、昨日:46 hit、合計:156,184 hit

第六十三話 甘美な寂しさ ページ15

.





細身なのに固い胸板。後頭部と腰に回る手は力強く、体中に広がる体温を伝うように心臓の鼓動が聞こえる。


抱き締められているという事は容易に理解出来るものの、突然の出来事に私は体を硬直させた。






「どこ行くつもり?…傍に居てよ」




耳元で喋るその甘い声に、背筋を何かが這い上がるような変な感覚がする。


鼓膜を揺らす甘美な低音ボイスは、元々声が良い上に風邪で掠れているから本当に色気が半端ない。




起きていたという事に驚愕しながらも、風邪のせいか珍しく弱々しくか細い声色に私は悶えたくなる気持ちを必死に抑えていた。


これは可愛いの域を越えている。




というか、そんな事を耳元で治くんに言われたら尊すぎて私が死んでしまう。


死因推しが尊さにより死亡とかさすがに格好が付かないから死ねないけど。





いつにも増して甘えん坊な治くんの頭を優しく撫でて上げる。


少しだけ目を細めながら私を見つめてくる治くんの頬に、私は触れるだけの接吻をした。




少しだけピクリと肩を跳ねさせた治くんが、私の首筋に顔を埋めてくる。


そのまま頬擦りをしてくるのは治くんの癖で、まるで猫みたいで愛らしい。



その可愛さに思わず頬が緩んだ。






「…ねえA、一つだけ…聞いても善いかい?」


「ん?どうしたの?」




治くんの言葉に不思議そうに首を傾げて聞き返す。治くんは少しの沈黙の後、顔を上げて私の瞳を見た。



その全てを見透かすような透明な瞳はとても綺麗で、吸い込まれるようなそれに思わず見とれるように見つめ返してしまう。




.

第六十四話 人間の心理学→←第六十二話 溢れる本音



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (546 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1433人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (2023年5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。