赤色に染まる白の君 (ページ7)

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❤話すのは得意さ！話すのはね？ページ7

ジャックside

あの日の思い出を、僕は今日までずっと忘れることなく過ごしてきた。

『俺が、姿をあげた？』
「そうだとも！君は僕のアリスさ！」

今日やっと彼に会えた！ずっと待っていたんだ彼に会えるのを！
わざわざ手間のかかることをしてまで待ち続けたんだ！！それなのに覚えてないなんてあんまりじゃないか！

「僕のアリス、君はさっき招待状を開いただろう？」
『招待状…、あの手紙か！』
「そう！あれのおかげで僕は君に"夢"を通して会えるようになったんだ！ふふっ、苦労したんだよ？魔法やら時空の障壁やらたくさん難しいことをこなしてこうやって辿り着けたんだ」

椅子に座って大人しく紅茶を飲む君も可愛いね。でも大人しいなんてつまらない！

「さ、ずっとお茶会をしよう！それともクロッケーがいいかい？君の好きなことなら何でもしてあげるよ！」

昔みたいに！

『……お前の話が聞きたい』

彼はそう言ってティーカップを置く。昔より少しだけ鋭くなった水色の瞳が僕を見つめると、不思議と胸が熱くなった。

『お前は誰なんだ。此処は何だ。謎ばかりでちっとも分からない。そもそも、お前が何で俺で楽しそうにしてるのかも分からないし、昔会ってるとしても覚えてない』

成程？確かに忘れるには丁度良いほど長い時間が過ぎている。僕は覚えていても、彼が覚えていないとまたこの夢の道も閉じてしまうかもしれない。

「じゃあ話してあげよう。僕は静かに話すことだってできるんだ」

椅子に座って向かい合う。綺麗な水色を見つめながら、僕は口を開いた。

もうずっと昔の話だ。僕がまだ皆と同じトランプ兵だった時の話。
ある時、夢を通してワンダーランドに来てしまった男の子が居た。
その子は《不思議の国のアリス》の話が大好きな子だった。その中でもハートの女王に仕えるトランプ達が気に入りだったらしい。だからかな、最初に彼を見つけた時、とても嬉しそうに抱きつかれたんだ。
とても可愛い子だった。一緒に薔薇を塗り、見回りをし、イカレ帽子屋のお茶会も消える化け猫にも会わせた。キラキラした目を輝かせて喜んで、コロコロと表情を変える彼はとても幸せそうだった。僕は彼のことがとても、とても好きになった。

そんな時、女王陛下のタルトが盗まれた。

皆僕が彼にこっそり与えたんだと噂して疑った。その話は女王の耳まで届き、僕は裁判にかけられた。
下されたのは斬首刑。彼の知る話通りの結末。でも、

彼は、僕を守ってくれたんだ。