❤見たこと無い顔しないで！ ページ45
ジャックside
「え〜？じゃあ最初から知ってたの？」
『うん』
一緒に薔薇を塗りながら昨日のことを話してたんだけど、まさか最初から気づいてたなんて…
『ていうか、同じ世界出身の僕にやった時点で失敗じゃない？』
「だって面白そうじゃないか！エース反応いいし！」
『複雑だなぁ〜』
べちゃりとペンキを塗って薔薇を塗る。今日はエースも処刑終わって一緒に薔薇の色塗りしてくれてるんだ！あ、でも頭痛がする〜とか前言ってたけど大丈夫かな…？
「そう言えばさぁ、前薔薇塗ると頭痛い〜って言ってたけど、大丈夫？」
『ん？あぁ、そう言えば頭痛くないや……治ったかな』
小さな脚立に乗ったまま手を止めて思い返すエースに、僕は「良かったね」と笑ってあげた。
…僕も何で頭が痛くなるのか分からないけど、記憶に関係することだったのかな。
「(ま、あっても無くてももう戻れないんだからいっか)」
そう思い直して薔薇を塗っていくと、どこからともなくバターと蜂蜜の匂いが漂ってきた。
『あ、ちょうちょ』
「ほんとだ」
上を見ればこの辺りには滅多に来ないバター蜂蜜パンの蝶が飛んできてた。迷いの森にしか生息してないのに、道を間違えて飛んできちゃったのかな？
『珍しいなぁ。そう言えば迷いの森行ってないかも、後で散歩しに行こうかな』
一匹の蝶を指先に止めて、微笑んでから空に放つ。そんな光景をぼんやり見ていた僕は、エースの頬に蜂蜜が付いていることに気づいた。
「エース、頬に付いてるよ」
『え？』
「ほらここ」
脚立を寄せて登り、エースの頬についた蜂蜜を指で取る。そのまま舐めれば甘い蜂蜜の味がした。
「後で羽をもいでお昼ご飯にしよっか。紅茶も淹れて……」
そう呟いていたら、突然エースが脚立から落ちた。ガタタッて音がして、思わずビクリと体が驚きで跳ね上がる。
「ど、どうしたのエース！？大丈、夫……」
『っ……』
え、顔真っ赤…ペンキでも被った…？
「エ、エース…？」
『……アリスにやれよそういうのは…』
「…！」
そう言うのって、もしかしてさっきの……
『ぼ、僕こっちやるから！』
「え、ちょっと！」
脚立を持って、エースは慌てて向こうに行っちゃった。…え、何あの反応、初めてだよ僕あんな顔見たの。
「……可愛い…」
物凄く可愛い。恥ずかしくて照れちゃって、耳まで赤くなって……。どうしよう、思い出したら何だか胸がドキドキしてきた……
「…はぁ〜…」
仕事にならないよ…どうしてくれるんだ…！
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2022年10月11日 21時
