❤誰が手を出したの? ページ30
ジャックside
「……ここかな」
そう言って、僕は彼の頭に手を突っ込んだ。
ドプッと水の中に手を突っ込むように手が入ると、彼は途端に目から光を無くす。赤から黒に戻った目を見つつ、僕は彼の頭の中を掻き回した。
「(…全体的に毒がこびりついてる。あの林檎、僕のトランプ兵に何してくれてるんだ…っ)」
彼にかけた暗示の魔法を象徴する玩具が全部木端微塵になってる。こんなことができるのは林檎と鴉だけだ。
「めんどくさいなぁ…」
壊れた玩具は戻らない。首を刎ねたトランプが入れ替わるように。えぇと確か、この玩具は煩い時計だった気がする。あれ、違ったっけ?あとこの玩具は……
グチュグチュ掻き混ぜて組み立てて、彼にかけた魔法をもう一度掛け直し終えたのを確認してから手を引き抜く。途端に彼の目は僕と同じく真っ赤に染まって、何事も無かったかのように動き出した。
「……」
彼はもう仕事に行った。この場には居ない。残ったのは手のひらに乗る毒の付いた玩具の破片だけ。その破片を強く握って粉々にすると、ふっと息を吹きかけて空気中に捨てた。
「盗み見とは悪趣味だなぁ。…出てきなよ」
さっきからドアの後ろで様子見てるの知ってんだよ。
「…話は分かってるな?」
「さぁ?何のことやら」
背が高くても隠れられるもんなんだね、毒林檎。
じっと見下ろすように睨みつけるそのムカつく顔におどけてやると、林檎は眉を寄せて嫌悪を顕にした。いい顔するじゃん。
「その様子だともう気づいたみたいだな」
「勿論。で?僕のトランプを勝手に毒漬けにして何をしたのか教えてほしいなぁ?マルフィと一緒に何をしてたの?」
「……」
だんまり?僕は知ってるよ。彼は僕のお気に入り、僕のトランプ兵だ。彼のことなら何でも知ってる。
「着いてこい。話がある」
そう言ってアイツは背中を向けて歩き出した。はぁ〜あ、面倒な事になっちゃったなぁ、でもいっか。ここは大人しくついて行こう。
背の高いアイツの背中を蹴っ飛ばしたくなる気持ちを抑えて、僕はあいつについて行った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月11日 21時