🍎それはとても驚きのものだった ページ28
アップルside
好奇心旺盛な鴉による尋問は、ゆっくりと時間をかけて行われた。あの妙に優しい目をしたエースは私の毒で人形と化し、そんな彼にマルフィは遠慮なく妖精の目を使い質問を繰り返していく。
妖精の質問は恐ろしい。どんな嘘も見抜き、かけられた魔法を見破り打ち破る。マルフィが言っていた暗示の魔法も今彼の手によって一つずつ破られているのだろう。質問を聞いていると、徐々にエースの答えが変わっていくのを感じた。
「さぁ、正直に答えるんだ。君は一体誰かな?」
『……お、れは………俺、は……ジョン……ジョン、ハーネス……』
「ジョンか。君はどんな子なのかな?」
『………イギ、リス………日本に、りゅう、がくし……』
「イギリス、日本に留学、……」
「……おい」
「分かってるよ。…君は、"人間"かい?」
『…………は、……い……』
「…ああ、そうか。…なんてことだ」
それだけ呟くと、マルフィは小さく溜息を付いた。私も呆然とした。
人間、人間だと?ハートの女王の手下であるトランプ兵が、元人間?全くもって理解が出来ない。エースから感じるのは我らと同じ魔法の気配、人ならざる者の気配だ。到底人間とは思えない。
「どうやら随分と、彼は思い切ったことをしたようだね…っ」
「…!マルフィ、お前…」
「大丈夫さ。目ならすぐ治る」
頬を伝う血の涙を拭き、やつは再度エースに向き直った。
「最後の質問だ。…君に何があったんだい?」
『…………、………お、れ…俺は……』
辿々しい声が言葉を紡ぐ。マルフィが暗示を無効化する中、突然会話に変化があった。
『……嫌だ』
はっきりした声。途端に虚ろな目が見開かれると、エースは突然その場で叫びだした。
『嫌だっ!嫌だっ!!皆何でっ、裕介、ジャックッ、痛い、離してっ!!そんな目で俺を、僕を見ないでっ!!怖い、怖いよジャックッ、ジャックハートッ!ジャックッ、ジャックッ!!!い゛っ、あ゛!?あ゛ぁあああぁあああぁ゛っ!!!!!…………、………』
「っ、アップル……」
「……」
毒を睡眠薬のような性質にして眠らせたが、暫く抜かないほうが良いだろう。また叫ばれたら皆起きてしまう。
「すまない。助かったよ」
「…念のための防音魔法に助けられたな」
「ああ、流石私だ」
マルフィも魔法を解き椅子に安心してもたれかかる。私はぐったりと項垂れるエースを見て、複雑な気持ちをぐっと飲み込んだ。
…明日にでもあのハートを問い正さないといけないようだな。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月11日 21時