🖤鴉の慟哭 ページ9
エースside
荒れ狂う風が身体を打つ。空飛ぶ巨大な足についた大きな爪が顔に当たる寸前、身体をトランプにして爪の一撃を避ける。
『あっぶないな……!』
別の場所に逃げて身体を元に戻しても、間髪入れずに炎が飛んできて攻撃を仕掛けるタイミングが掴めない…っ!飛んできた火球を斧で両断すれば、背後の茨がたちまち燃え上がって熱を背中に叩き付けた。
『どうしたんだよマルフィ!』
僕がいくら叫んでも、目の前の鴉は鳴き声をあげて襲いかかってくる。舞い落ちる黒い羽根が僕に全て向けられると、弾丸のように僕目掛けて撃ち込まれた。
『っ゛…………』
斧で打ち返す中2本の羽根が斧を持つ右腕に突き刺さる。走った痛みに顔を顰めた時、ぐらりと視界が歪んだ。
すぐに斧を地面に立てて何とか倒れるのを防ぐけど、睡魔のような感覚が襲ってきて瞼が落ちかける。これ、まさか棘と同じ眠りの魔法かかってるのか……っ
『くそっ…!』
羽根を引き抜いて投げ捨てる。まずい、2本撃ち込まれただけで頭が眠気でふわふわして、立ってられない……っ
寝るな、絶対寝るな…!寝たらマルフィに焼かれるか食われるぞ…!!
『(どうしてこうなってるのか分からないままだ、しっかりしろ僕!)』
頭を振って唸り続ける鴉の前に立つ。口の中から燃え上がる緑の炎の熱気が髪を煽った。
…………何だ?何か、変な感じがする。マルフィの首の裏、そこに別の魔力を感じる。嫌な感じでは無いけど、もしかしてそれが原因か?
『あっぶな……!』
考えてる間に突っ込んできた嘴を避けて、そのまま彼へと飛び乗る。背中に乗られて大暴れする彼に必死で捕まりながら、何とか項の付近まで来ることが出来た。
『うわっ!?』
ブォンッと体が重力に引かれる。飛び上がった鴉はそのままめちゃくちゃに飛んで僕を振り落とそうとしてきた。や、やばっ、落ちる!落ちる!!
『(早く原因見つけないと僕が落ちる!)』
どこだ!?あぁもうっ、羽根に隠れて全然見えない!しがみつく手からも眠気で力が無くなっていく。くそ、もう……!
『大人しく………しろっ!!』
僕はその場で、ありったけの魔力を放った。周囲の空間が飴のようにぐにゃりと歪んで変形する。重力すら歪むこの中で、僕は重力の集中点を彼へと変更した。
その瞬間、空間にある全てのものが彼に向かって飛んで行った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時