🖤黒い羽根が散る ページ8
エースside
樹海は相当広くて頭がクラクラする。ジャックの言った通り進んでいくにつれて蛇みたいに動く茨が増えてきて、棘に触れないように歩くだけでも大変だった。
『相当深くまで来たけど……』
これ、僕帰れる?完全に道分からなくなっちゃったけど、帰れる?普通に遭難したんだけど。
手にした羽根ペンがさっきから道を示すように動くからそれに従って来ちゃってるけど、大丈夫かなぁ…………。マルフィを信じるしかないか……
ガサリと茂みを掻き分けて、蠢く茨の隙間を通り抜けて、光が木漏れ日のように差す木々の道を通っていた時、
『ん?』
ふわりと僕の目の前に黒い羽根が落ちてきた。ガサガサしていて光沢の無い黒い羽根。まるでこの羽根ペンの羽根みたいだ。
『……ってことは…』
近くに居る?周囲を見渡してもマルフィらしい姿は無い。でもよく見ればあちこちに羽根が散っているじゃないか。この付近に居るってことかな。
サク、サク、と草が踏まれて音を出す。羽根ペンは真っ直ぐ行けと言うように羽根を先に向けるから、僕は真っ直ぐ道無き道を歩いた。
その先は広い空間だった。木々が空を覆い、茨が辺りを埋め尽くす。その中央に”ソレ”は居た。
まるで巨大な羽根のカーテンのようなそれは真っ黒で、空を覆う木々にすら届くんじゃないかと言うほど立派なツノを生やしていた。時折聞こえる唸り声で生き物だと分かるそれは、ゆっくりと翼を開いて顔を見せる。緑の瞳がギラリと光って、真っ黒で鋭い嘴が僅かに開いた。
『………マルフィ?』
まさかとは思う。でもこの魔力、あの目。マルフィのものにそっくりだ。
1歩近づくと、その巨大な鴉は翼を広げて全容を露わにする。強靭な足は家すら掴めそうなほど大きく、体躯も僕が思ってる以上に大きい。鴉みたいなドラゴンを相手にしてるみたいだ。
【__】
開かれた口から低く唸る声が漏れる。威嚇されてる。僕のことが分からないのか?
『マルフィ、僕だ。エースだよ!僕の声聞こえてる!?』
声をかけた途端、耳を劈くような鴉の鳴き声が響き渡る。鳴き声の衝撃が暴風になって僕に襲いかかる中、何とか踏ん張って耐えるとブォンッと羽ばたく音が聞こえた。
顔を上げた途端、僕の目の前を緑の炎が包み込んだ。
咄嗟に横に転がって避けると、巨大な火球が後ろの茨に当たって燃え尽きていく。帽子を深く被り直してから、僕は手に金色の斧を出現させた。
『とにかく、落ち着かせないと…っ』
どうしちゃったんだよ一体…!
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時