🖤二人だけの時間 ページ45
エースside
アップルの部屋は面白い。僕の部屋は赤と黒と白の三色でまとめられていて、薔薇やハートがたくさんの飾りが多い部屋だけど、アップルの部屋は言うなら本と薬品が多い部屋だ。
青と黒でまとめられた部屋は落ち着きがあって、ダークウッドの家具が多い。大きな棚に寄って中にある小瓶を取り出すと、「落とすなよ」ってアップルが背中に声をかけてきた。
『これってさ、全部毒?』
「あぁ。神経毒からこの世界に存在しない毒…物語の中で作られた毒まで、ありとあらゆる毒が揃っている。勿論、解毒に必要な薬も入ってるぞ」
『へぇ〜……』
マルフィから「"アップルは年長者だから色々と凄いぞ〜"」なんて聞いてたけど、まさか自分で毒作ったり集めたりしてるとは……
『でもこんなに沢山あったら、どれがどれだか分からなくならない?』
「お前たちは同じハートのトランプでも違いを認識できるだろう?それと同じだ」
『ふぅん……柄とか無くても判別できるんだ……』
毒は毒を区別できるのかぁ。…でもアップルなら出来そう。前なんか散歩中に木に話しかけたら一気に花咲いてたし。凄かったよあの光景、花達が全員アップルにキャーキャー言ってたもん。長くお話として存在するアップルは色んなことが出来るから凄いよなぁ。
小瓶を元の位置に戻してガラス戸を閉める。色とりどりの液体が入っている小瓶は飴玉みたいに綺麗で、思わず見惚れてしまう。
「…おい」
じっと小瓶を見ていたら、突然腕を掴まれて後ろに引かれる。そのまま僕は後ろに立っていたアップルの腕の中にすっぽりと収まってしまった。
「私以外の毒に目を奪われるな」
『…なぁに、嫉妬しちゃった?』
「だとしたら?」
『ふふ、可愛いなぁって』
クスクス笑うと、「悪かったな嫉妬深くて」なんて拗ねたように言うもんだから、僕は優しく頭を撫でてやった。
『僕はアップルの毒しか興味無いから心配しないで』
「……毒漬けにするぞ」
『わぉ!熱烈なお誘いだね!』
でもアップルの毒なら良いかも。どうせお姫様に一口しか食べられない運命なら、残りを僕が食べて腹の中に収めてしまいたいなぁ。だって絶対アップルは一番美味しい、二度と食べれない最高の林檎の筈だから。
『(お姫様なんかに食わせたくないんだよね)』
いつかこうして人の形を失った時、アップルが林檎に戻って役目を終えた時、残った身を食べるのは僕だ。その毒で魂すら溶けてしまうなら本望。
彼の手を握って、そんな事を思った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時