❤僕が見ている彼の姿 ページ31
ジャックside
扉を開けると、真っ暗な空間の中に出る。親友と共に足を進めて傍聴席に座ると、丁度クラブの7が裁判にかけられているところだった。
「ほら、あそこ見てご覧?」
エースを指差すと、ダルは「エースだ!」なんて目を輝かせる。で、当の本人はと言うと…
『………』
すっごい仏頂面でこっちを見やしない。そりゃそうだろう、こっちに気づいてないんだから。
証言台の横、エースはそこに立ってずっと罪人を睨みつけるように見つめている。右手には大きな金色の斧を持っていて、すらりと背を伸ばしたまま微動だにしない。相手からしたらかなり怖いだろうね。
「赤い薔薇の原木と間違えて白い薔薇の原木を植えた罪で、被告を斬首刑に処す」
淡々と読み上げられる罪状に、勿論クラブは「ま、待って下さい!」と声を上げる。裁判長たる女王様が顔を顰めて「何だい?」と声をかけると、クラブの7は証言台に身を乗り出すようにして声をあげた。
「私は植えていません!同じ薔薇当番だったハートの1が目撃しているはずです!」
「…本当かい?エース。クラブの7は原木を植えてなかったのかい?」
おっと、これは珍しい。エースが証人になるなんて早々無いぞ?
『さぁ?ですが僕が覚えている限りでは……クラブの5,7,8が白い薔薇の原木を植えていたかと』
「な…っ!?」
「馬鹿なことを言うなハートの1!私はやっていない!クラブの7がやったんだ!」
「私もやっていない!ハートの1のでたらめだ!」
「静粛に!!」
クラブの三人が抗議の声を上げる中、女王様はこう宣言なされた。
「薔薇の庭の管理をしているエースの証言だ。クラブの5,7,8の首を刎ねよ!」
あーぁ、やっぱりこうなるよね〜。
「ジャ、ジャック…あの三人は本当にやったのか?」
「ん?やってないんじゃないかな。だって僕原木植えてる所見たこと無いし」
「じゃあ何でっ」
「親友、この世界はワンダーランドだよ?常識なんて通用しないのさ」
此処じゃ全ての判決は女王様の言葉。全ての証言はエースの言葉だ。一番を引き寄せる彼の言葉は一番信用される。それが冤罪や無実であっても、エースが有罪と言えば有罪になる。
エースはまず証言台の前に立つクラブの7に斧を向ける。怯えて後退るクラブの7の首に向かって、彼は迷わず斧を横に振り抜いた。
プシャッと黒いインクが首から吹き出して、エースの体を濡らす。転がった首を蹴り飛ばして、彼は冷たい目で次のカードを睨んだ。
『…次』
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時