ナイモノネダリ＜M.Hokuto＞ (ページ2)

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Aside

どこか、懐かしい夢を見た気がする。

夢を見ていた時は、はっきりとその光景が脳裏に焼き付いていたのに。

夢から覚めてしまうと、どうしてこうもぼんやりしてしまうんだろう。

私は、ベッドから起き上がると、時計を見る。

「…やっばい。もうこんな時間…！！」

私は急いで洗面台に向かった。

寝癖だらけだった髪の毛をなんとかまとめると、一つ結びにしてくくる。

目覚まし時計、なんでならなかったんだろう…

そういえば、電池が切れていたことを思いだし、ため息をつく。

最近こんなことばっかだなぁ…

もうちょっとちゃんとしないと。

私は鏡に映る自分自身を見つめ、「…気を緩めない、A。」と喝を入れる。

「…よし、」

私は洗面台を出て、キッチンへ朝ごはんの支度をしに行った。

私の職場は、駅の近くの本屋さん。

もう働き始めて数年が経過している。

いつも通り、新しく入荷してきた新作の小説を棚に入れていると、誰かに肩を叩かれた。

「…ん？どうしたの高地」

優吾「いや、悪い悪い。この作家さんが書いている小説、どこの棚に入れればいいんだっけ？」

話しかけてきたのは、同僚の高地優吾。

常に笑顔でいじられキャラだけど、まあいいヤツだ。

私は、高地が持っている小説を見つめる。

「えっと…確か、これは…」

私は高地と一緒に店内を歩き回って棚を探す。

「確かこのあたりに……あ！あったここだ。」

優吾「お、ホントだ。マジ助かったよA。ありがとう。」

「どういたしまして。一緒にいれるの手伝おうか？」

優吾「いいの？」

「うん。もう私の方は終わったし。」

優吾「マジ助かる！じゃあ、他のシリーズも持ってくるから取りあえずこれ入れてくれる？」

「うん。まかせて。」

優吾「ありがとう！」

高地は、裏の方に置いてある本をとりに行く。

私は高地から預かった小説を抱え、一冊ずつ本棚に入れていく。

ふと、私は一冊の本が目に留まった。

「……あ、……」

私は、その本をまじまじと見つめた。

この黒い表紙。

男女二人が笑い合ってる絵が描かれている。

私は、この本に見覚えがあった。

「……これ……」

私の脳裏に、ある記憶がよみがえってきた。