愛吐 25 ページ31
太宰幹部と目を合わせない様に俯きがちでいたのがバレてしまった。私は控えめに彼と目を合わせた。彼の瞳孔にはしっかりと私の姿が浮かび上がっていた。
「……君は幹部と首領を通してこの役職につけたんだ。だから堂々としていればいい」
急な太宰幹部からの言葉に心底驚いて話している内容が頭に入って行くまで難儀した。
それでも彼は止めどなく続ける。
「君の事をよく思わない者が居るのは当然だろう。それに傷つく君は未熟と云う事だ」
「俯いて、人の云う事に機械のように頷いて、大人しく耐えて…一言くらい彼らに云い返せるように強くなれ」
「それができないなら辞めろ。……君ならできるね?」
ぽんと肩に手を置かれた。見切り発車だけど私は彼を見据えてやります、とはっきり云った。
「良い返事だ」
見間違いだろうか。太宰幹部はほんの少しだけ口角を上げて部屋を出て行った。
__________
思えば私はあの頃に太宰さんに堕ちた。
彼は酷く冷徹な人間で、倫理観のない合理主義を重んじ人だった。
同じように、ヘマしたら肉体的に暴力を振るわれたことも数える程ではあるが無いことは無かった。
もっとも、仕置と称して快楽を植えつけたのもまた彼であるが。
孤独で、誰からも必要とされなかった私を太宰さんはほんの少しでも必要としてくれた。
実は彼はとても繊細で優しい方なんじゃないかと思う様になった。
事実、織田さんや坂口さんと話している姿を見て確信した。
都合のいい女でも何と云われても私はそれでも良かったのだ。
『ごめんなさい……』
その声は布団の中の小さな空間に吸い込まれて行った。
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桜雪(プロフ) - りかまるさん» コメントありがとうございます。応援してくださる方がいて本当に感謝してもしきれません。拙い物語ですがこれからもよろしくお願いします、! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - のら猫さん» 10分、、それはすごい、、!コメントありがとうございます!自分のペースで頑張ります! (2019年4月13日 12時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - びあんさん» コメントありがとうございます。やっぱり小説を書くのってとても労力のいることだと思います。びあん様も同じ作者の身として無理のない程度に頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
桜雪(プロフ) - sonataさん» ありがとうございます。sonata様の作品とても素敵でした、、!大好きだなんて言葉を頂けてとても嬉しいです。お互い頑張りましょう! (2019年4月13日 11時) (レス) id: c10e018f98 (このIDを非表示/違反報告)
りかまる(プロフ) - ゆっくりでも大丈夫です。無理なく、執筆して頂けたらと思います。応援しています! (2019年3月24日 22時) (レス) id: dbac4f4de5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜雪 | 作成日時:2018年12月29日 21時