心 × inar

記憶の引き出し ページ32

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たまに、…本当にたまに、だいちゃんが口にする言葉がある。


…今も､､









有｢…おにいちゃ…、っ｣

伊｢、…お兄ちゃん？｣

有｢どぉこ、…っにいちゃん、…｣








そう…" お兄ちゃん "




だいちゃんを引き取るときも、お兄ちゃんがいる、そんな話は聞いたこと無かった。

けど、" お兄ちゃん " と言うのを聞いたのは、これが初めてじゃない。








伊｢…どうしたの？｣

有｢んん、…いのちゃ、っ｣







できるだけ優しく聞いてあげると、決まってシクシクと泣き出してしまう。

けど、聞かないとここにはいない " お兄ちゃん " を探し続ける。








有｢んうっ、…ひっく、にいちゃ、…いないっ、｣

伊｢…うん、……｣








少しでも落ち着いてもらおうと、抱きしめながら背中をさすってやる。








伊｢…オレも後で探すからね、……｣

有｢ひくっ、…んぅうっ、…っ、だいちゃ、ね､…っ｣

伊｢……、ん｣








これは…。
…話してくれるのは、初めてだ。

前まで、こうなった後は必ず寝ちゃってたから…








有｢…おにいちゃん、だいすき、だったの…っ｣

伊｢うん…｣








『だった』……過去形…。

…この感じからすると、だいちゃんにお兄ちゃんがいるのは本当だろう。







有｢っっ…、で、でもねっ、……いな、の、｣

伊｢…、いなくなっちゃった、の…？｣

有｢…っ、……、…ｯｯ｣







辛くなってきたのか、涙が止まらなくなってしまった だいちゃん…


…いなくなった。
どういう事だろうか…








伊｢…そっかそっか、…だいちゃんは強いね、…けど辛かったら、辛いよって言っていいんだよ？｣

有｢んんぅうっ、ひぐっ…､ いのちゃぁっ、…｣









……記憶の中の、きっと一番奥の鍵を掛けた引き出しに、" お兄ちゃん " の存在があるんだ…。






ちゃんと、調べないと…。





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