妹じゃなくて

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午前10:56
久しぶりにベッドから立ち上がったのは玄関のチャイムが鳴ったから






自分の意思で着ている訳じゃ無いパジャマを肩に背負ったまま重い腰を上げた






小窓からのぞく姿を確認してハンコを持って行った






差出人の住所はインド
旅行中の祐基の両親からだ

届いた小さなダンボールの中には毎回恒例の「お土産です」とだけ書かれた手紙と
上質なシルクで織られたハンカチが入っている






「、、なんで今かな」





わけもわからず流れていたものとは違って
今度はちゃんと言葉で説明できる感情と一緒に涙が溢れる








やっと自分の正直な気持ちが表に出てきた







このまま会えなくなるのが怖くて


出て行く祐基を止められなかった自分にむかついて


身体でも言葉でも


もっと本当の気持ち伝えられたんじゃないかなって


泣いちゃってごめんねって


全然嫌じゃ無いんだよって


びっくりさせちゃってごめんねって







本当は嬉しかったんだよ


祐基にとってのあやがそういう存在でいられるって知れて


大事な幼馴染で兄妹みたいな関係だから
ずっとずっと自分に嘘ついて我慢してたけど


大好きでたまらないの


出会った頃からあやだって変わったんだよ


あやだってちゃんと人を好きになるの


だからまだちょっと怖いって思っちゃうこともあるけどあやのこと









妹じゃなくて









彼女にして









堰を切って溢れ出した感情はシルクくらいじゃ拭いきれなくて枕に顔を埋めた


まだ少し残る愛おしい甘い香りを胸いっぱいに吸い込んで声をあげて泣いた


何度も何度も名前を呼んで
それでももう戻って来てはくれなくて









泣き疲れた午前11:49








玄関のチャイムじゃなくて
激しく扉を叩く音で意識が戻った

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