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壱ノ弐 赫灼と剣士 ページ10

狭霧山と呼ばれる、酸素の薄い山がある。そこには育手である鱗滝 左近次という男が暮らしているが、彼には最近、新しい弟子ができた。
名を、竈門 炭治郎。
彼には類い稀な才能があるわけではなく、剣術は並の並。だが、彼は努力の天才であった。
普通ならば泣いて投げ出すであろう鱗滝の修行にも食らいつき、何度手のマメが潰れても前に進もうと足を止めることはしない。
それでも、壁というものはある。
巨大な岩を前にして、炭治郎はただ茫然としていた。その岩を切れなければ、鬼殺隊になるための最終選別には行けない。だが、今の炭治郎には切れそうにない。切れる前に、刀が折れてしまう。

「……」

そんな彼を、影から見守る者がいた。
炭治郎が鱗滝の弟子となった日に初めて顔を合わせたっきりの青年、錆兎だ。

「気になるなら、声をかけてみたら?」

そう彼に声をかけるのは、雪の結晶が描かれた羽織の女性、Aだ。
どちらも滅の文字が刻まれた黒い学ランのようなものを着ており、彼らが鬼殺の剣士であることが分かる。

「義勇が気にかけていたからな。少し様子を見に来ただけだ」

口ではそう言うものの、錆兎の眼は真っ直ぐに炭治郎を見据えており、口で言う以上に、彼が炭治郎を気にかけているのは明らかだ。
錆兎の同期であり親友でもある冨岡 義勇から鎹烏を通して届いた1通の手紙。そこには、"鬼を連れた少年"を鬼殺の剣士に育ててほしいという、友として珍しい頼み事だった。

「……」

目の前の岩に四苦八苦する炭治郎を、錆兎は黙って見つめる。
ただ見ているだけでは、炭治郎の助けになるはずはない。とうとう、炭治郎は地面に表膝をついてしまった。
あれは、目の前の壁に絶望した人間のものだ。
錆兎は何も言わずに踵を返して、炭治郎から背を向けてしまう。その背中を止めようと、Aは錆兎の名を呼ぶと、彼は1度だけ立ち止まった。

「アイツの覚悟はその程度だったというだけだ」

責めるでもなく、事実のみを淡々と告げる。
覚悟のない者をどうこうする気はないと、錆兎は再び歩き出してしまう。
どうしたものか、とAが右往左往しだいたその時に、ドォンと鈍い音が炭治郎のいる方から響く。
そこで起こった事に、Aは大きく目を見開いた。それは、思わず振り返った錆兎も同じく、お面越しでも分かるほどの動揺が見て取れる。

「頑張れ俺!頑張れ!」

そこには、岩に頭突きをし自らを叱咤する炭治郎の姿があった。

壱ノ参 赫灼と木刀→←壱ノ壱 赫灼と宍色



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squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!こちらこそ、面白いストーリーを提供していただきありがとうございます。頑張ります! (2019年8月3日 17時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 続編頑張ってください!!お花見のストーリありがとうございます (2019年8月3日 17時) (レス) id: 35c1a3a4d0 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月2日 22時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)
りんご - foooooo!!!))ついに来ましたね、続編!!更新頑張ってください (2019年8月2日 21時) (レス) id: 65b8d779c9 (このIDを非表示/違反報告)
squid(プロフ) - シンアさん» コメントありがとうございます!夏に合わせて海に行ったりとかを考えていたのですが、お花見も良いですね。参考にします、ありがとうございます! (2019年8月1日 20時) (レス) id: bf945fda6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:squid | 作成日時:2019年6月1日 20時

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