親子はじめました【番外編2】

＿ ページ33

『テヒョン』


ブランコを揺らす振り向かない背中


『もう日が暮れるよ。こんなとこでなにしてんの』

「…俺と姉ちゃんのこと探してた」

『私とテヒョン？』

「うん」


隣に座ると、テヒョンが遠くを指差す


「すべり台の横の花壇、」

『うん』

「あそこ、グクが大好きなところ。
四つ葉を探すんだ、あの草の中から」


誰もいないそこにグクの小さな背中を思い出す


「向こう側のベンチは、
姉ちゃんがグクを見てるときによく座る場所」

『…私』


ベンチに座る私が、
グク！バックには草入れないで！と声を上げる


「あの街灯の下は、ユンギヒョンが
保育園から帰ってくる姉ちゃんとグクを待つ所」


ぱぱっ！ただいまぁ！
飛び上がるグクにユンギが笑う


「砂場は、俺たち」

『俺たち？』

「うん。俺と、姉ちゃん」


私と、テヒョン


「俺と姉ちゃんがべちゃべちゃの泥団子並べてんの」


顔中泥だらけの私達が楽しそうに笑う


「ジャングルジム、俺がよく落っこちてた。
泣いてたら姉ちゃんが飛んできてくれる」


いたいいたいのとんでいけー
小さな手が、小さな背中を撫でて
何回も何回も、泣き止むまでその言葉を唱える


「時計は5時になると夕焼けこやけの音が鳴る。この公園はならないけど」


その音を聞いた私達が嬉しそうに振り返って
手を振るお母さんに飛びついていく


「見えた？」

『うん。見えたよ』


きっと。ここに座ってもっともっと沢山のことを
テヒョンは思い出していたんだろう


「…ひどい言い方してごめん」

『さっきまでめちゃくちゃ腹立ってたけど、
仕方ないから許してあげる』


ほら。
また私は簡単にテヒョンのこと許しちゃう


「寂しかったんだ」

『うん』

「簡単に俺のこと置いていっちゃうんだって思って、
あんなこと言った」

『うん』


わかってるよ。
だって私テヒョンのお姉ちゃんだもん。


「姉ちゃん」

『んー？』

「ありがとう」


驚いて、その顔を見る


「ずっと俺だけの姉ちゃんでいてくれて、ありがとう」

『テヒョン、』

「これからは、宇宙でいちばんじゃなくてもいいよ」


ー いちばんじゃないといやだあぁ


「宇宙でいちばんじゃなくても、
地球でいちばんじゃなくてもいいから、」


少し震えた声でそう言って潤んだ目が私を見た


「ユンギヒョンのお嫁さんになっても、俺の姉ちゃんでいてくれる？」


馬鹿だな、テヒョンは

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