親子はじめました【番外編2】

▼愛を歩く ページ1

妊婦って思っていたより大変だ。


物を落としても拾うのに一苦労
大好きなコーヒーも飲めない
トイレは近いし、何をしてもすぐ疲れる

でもこれも永遠に続くわけじゃないし、
少しずつ大きくなっていく我が子を感じて
そんなことも悪くないなと思える。


そう。
私が大変だと感じるのはそこじゃない。


「おい。おまえは動くな」


後頭部に目でもついているのか。
少し歩けばユンギが私の腕を掴む


「ヌナ！やめて！お願い座ってて！」


複合機の前に立てば
ジミンが何処からかすっ飛んでくる


「ヌナ？！どこいくの？！俺の許可なくどこか行こうとしないで！」


立ち上がろうと椅子を引けば
ホソクがその椅子を引き戻す


『…あのー。過保護すぎやしませんか？』


そんな私の呟きには当然誰も返事してくれない

仕事に来てるはずなのに出来ない事が多すぎる
いや、させてもらえない事が多すぎる。


妊婦はなにかとストレスが多いな。


『あー数十秒でいいから走り回りたい』

「ちょっと。サラッと恐ろしいこと言うのやめて」

『あはは、冗談』

「あははじゃないよ。全然冗談に聞こえなくて怖い」


ため息を吐いたホソクが
隣から立ち上がってキラッと目を光らせる


『会議？』

「うん。ちょっと行ってくる」


ホソクが会議ということは…。
向こう側でユンギとジミンが立ち上がるのが見えて
心の中でガッツポーズ


「なに、にこにこして」

『いやべつに』

「ヌナ休憩だろうけどうろうろしちゃダメだよ！」

『うん。しないよー』


するに決まってる。


「ぜっっったい走らないでよ」

『走んない。誓う。』

「よし」


会議室に入っていく背中を遠目で見送って
るんるん気分で立ち上がる。

過保護から解放される至福の時間を無駄にはしないぞ。
お腹は随分重たくなったけど不思議と足取りは軽い



小さな愛おしい重みを抱えて、歩きだす

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