親子はじめました

詐欺には気をつけろ ページ5

『二重契約ぅ？』


白目剥く私をよそに
メガネをあげて澄ました顔した弁護士


「はい。二重契約です。
この場合いわゆる詐欺の一つですね」

『さ、詐欺って…』


要するに。
私とミンユンギが同じ部屋を購入して
購入したはずの仲介業者は詐欺集団だったと。


「お二人が契約された不動産会社と、
ローン会社は別ですから裁判が終わるまでは
支払いは続くことになります」

『そんな…』

「俺たちこれからどうしたらいいんすか」


そう。そこだよ。
それなりにあった貯金はもうほとんどないし
給料だけで他の部屋なんか借りられるわけがない


「それはお二人で話し合ってもらわないと。
私の管轄ではないので。
こちらの書類にサインと印鑑お願いします」


そこは仕事じゃないから
そんなことは知らないということですか

ムカつく！人ごとだとおもって！
なんてこんな所で騒ぎ立てても何も解決しない




『どうすんのよ…』


片付けたばかりだったリビングに積まれた段ボール
コーヒーを見つめたまま座る私とミンユンギ


「どうすんのって。住むしかねぇだろ」

『住む？誰が？どこに？』

「俺と、お前が。ここに」

『はぁ？』

「今から引っ越す金もねぇし。
ローンも払ってるわけだし。それ以外にどうすんの」


そうですけれども。
なんであんたはそんなに落ち着いてんのよ


「良かったな、
二重契約されたのが変なオッサンとかじゃなくて。
知り合いだっただけマシじゃね？」


いや全然笑えないんだけど？
なにラッキーだなみたいな顔してんの？


『はぁ』

「嫌なら出てけば？」

『な！なんで私が出てかなきゃいけないのよ！』

「じゃあ喚くな。はい、解決」


怠そうに立ち上がると
まだ空き部屋にしていた所に荷物を運び込みだす



最悪だ
苦手なのに、あの人。

あの冷静な判断だとか臨機応変な対応とか。
どうしてもその対応にムカついてしまう。

ただの妬みだけど。ライバル心ってやつ？

私の同居人→←始まりの始まり

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す