63 . 家族。 ページ14
慧side
涼介「大ちゃんがね?抱きしめてくれたの。大丈夫だよって。…大ちゃん、あったかかった。」
涼介の場合、吃らないときは緊張がほぐれてる時だと薮に教わった。
たったの3か月前までは、ただの高校生と会社員。
あの青い月が浮かぶ夜に出会ってから、赤の他人だった俺たちが"家族"と呼べる関係にまでなれたこと、
今、こうして話を聞いてあげられること。
俺が生きてきた道が、必ずしも全てが無駄じゃなかったんだって肯定してくれているような気がして。
この子には、ちゃんとした愛情を教えてあげなくちゃいけないんだって、そう強く思った。
涼介「でもね、僕、お父さんのこと…思い出しちゃって。…その………怖くなったんだ。目の前にいる大ちゃんのことが。それでね…僕が、僕が…」
慧「…ごめんね。無理に話さなくていいから。」
涼介の目線が、俺と交わらなくなった。
どこかぼーっと一点を見つめている。
涼介の心の傷は、そう簡単に癒えるものじゃないんだ。
俺はまた、怖くなって。
涼介「慧にい…?んふふ、慧にいもあったかいね。
………あれ…なんで…」
必死で繋ぎとめた。
慧「涼介の心が、助けてって言ってるの。泣いていいんだよ。もっと自分を出してよ。家族なんだから。」
涼介「かぞく…」
涼介「僕、大ちゃんとお話したい。明日、ちゃんとごめんなさいって言いたい。僕の声で。」
慧「よく言えた、偉いよ涼介。これでもう大丈夫。明日、大ちゃんとしっかり話しておいでね。」
窓の外、空を見上げると
君は金色に変わっていた。
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作者名:朔 | 作成日時:2020年2月1日 23時