51 . 強がり ページ2
慧side
向かった先は、ほとんど行ったことがない保健室。
ドアを開けると、書類仕事をしていたであろう保健医の八乙女先生がこちらに目を移した。
「伊野尾くん、だよね?珍しい。どうした?」
…………。
「とりあえず座ろう?こっち。」
何も発さない俺に嫌な顔ひとつせず、優しく受け入れてくれた。
「これで筆談しよっか。一応クラスと名前書いといて。」
そう言って八乙女先生は、目の前の机に一枚の紙と
猫の柄が可愛いシャーペンを一本置いた。
言われた通り、必要事項を記入する。
「俺のことはヒカでいいよ。敬語も無しで!」
さすがに先生に向かってヒカは…。
"せめて光先生"
光「んー、しょうがない。じゃあ今日のところはそれで。」
"なんで、俺の名前知ってるんですか?"
これはちょっとした疑問。うちの学校、一学年だけでも300人はいるのに。
前に出るようなタイプでもなければ、話したこともない俺の事、どうして…
光「伊野尾くん、結構有名だから。テストでいっつも1番上にいるでしょ?先生たちの間でも話題になってるよ。」
あぁクラスのやつもそんなこと言ってたな。どっかの壁に張り出されてるから見に行けって。
点数だけは個表が配られるから、俺はそれで満足している。
それにバイトが忙しくて、それどころじゃないんだよね…。
光「塾とか結構行ったりしてるの?」
"いえ、そんなお金ありませんから。"
光「あ、ごめん。」
光先生はハッとして俺に謝ってきた。
"大丈夫です、慣れてるんで。"
ほんと、素直じゃないなぁ。
これが俺なりの精一杯の強がりだった。
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作者名:朔 | 作成日時:2020年2月1日 23時