青い月_僕の願いをその光に変えて...part2 (ページ1)

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50 . 寒い朝ページ1

慧side

6年前のあの日は、朝から特別寒かった。

いっその事、学校を休んでしまおうかと思うほどに。

でも、大学入試を間近に控えた当時の俺にそんなことをする勇気などなく。

重い足を引きずって学校へと向かった。

父親が他界してはや1ヶ月

突如始まった一人暮らしに困惑しながらも、バイトに追われる日々

バイトと言っても、人を相手にするものではなく、黙々と作業をする重労働

愚痴を聞いてくれる友達1人いなければ、並んで帰る彼女もいない。

もともとそんなに前に出るタイプではなかったし、むしろ今更人と関わろうなんて思ってもいなかった。

いや、人との関わり方すら忘れていたのかもしれない。

学校でもバイト先でも、ほとんど口を動かすことは無かったから、
一言も発さずに一日が終わる…なんてこともしばしば。

そうやって少しずつ、俺の周りから言葉が消えていったんだ。

そしてあの日、とうとう俺の身に異変が起きてしまった。

あれはたしか、数学の授業中

今年で定年退職をされるおじいちゃん先生が、何を思ったのか手を挙げていない俺を指してきて。

勉強は得意なほうだったし、みんなが難しいと唸っていたその問題も分かっていたから、すぐに答えようとした。

でも出来なかったんだ…。

声を出そうと頑張っても、出てくるのは掠れた音だけ。

「もういい、座れ」

ついには先生の口からこんな言葉が…。

俺はどうしようもない恐怖と孤独に耐えきれず、チャイムと同時に教室を飛び出した。