春組リーダーとの秘密 ページ48
｢一緒に旅に出よう……ジュリアス！｣
｢もっと肩の力抜いて｣
思っ立ったが吉日。
俺は同じように咲也を連れ出し、現在二人で近くの川原まで来ていた。
連れ出す相手が咲也だったのもあって、監督さんを説得するのはかなり大変だったけど。
なんとか折れてくれて助かった。
｢うう……なかなかすんなり言えない……｣
先程からはっきり言って詰まりまくる咲也に、俺はまぁこういうの初めてなんだろうしと自分に言い聞かせる。
別につっかえるなぁとは思うものの、そこに関して苛立ったりなどは特にしない。
むしろ芝居を初めてすぐの頃の自分を見ているようで、ただただ頑張れと思うばかりだ。
｢……咲也はさ、ロミオってどんな人間だと思う？｣
｢え、ロミオですか？｣
俺の質問に、うーんと悩み始める咲也。
まぁこんな事急に言われても普通すぐには出てこないよな。
｢芝居って言うのはつまり、その役になりきる事だから。自分なりに演じる役のキャラや特徴を掴まなきゃならない｣
｢役になりきる、ですか……｣
｢そ、例えば俺だったらこのシーン｣
草原から立ち上がり、咲也の隣に並ぶ。もう覚えてるから必要ないけど、念の為咲也から脚本を借りて、息を吸い込む。
川から運ばれてきた風が、ふわりと髪を揺らした。
｢一緒に旅に出ようジュリアス！ーーー世界中を巡るんだ！｣
川の向こうにジュリアスがいるのを想像して、自分の夢を語るように、大げさな身振り手振りで表現する。
｢ってな感じで、楽しそうなロミオを演じるかな｣
参考になるかは分からないけど。
そう付け加えて咲也の方を向くと、何を思ったのか咲也は目を見開いて俺を見続けている。
俺はこの顔を知っている。
語彙力がどこかに行った時の顔だ。
｢す、凄いです……！俺、まるで自分が劇場にいるみたいな、上手く言えないけど、そんな感じで！｣
両手を握りしめ、なんとかして伝えようとしてくれる咲也に、俺は笑いながら頭を撫でる。
｢ありがと。でも、俺は今の芝居よりも、咲也が全力で演じるロミオの方がきっと好きだろうから｣
｢そ、そんなこと！｣
｢あるよ絶対。咲也の考えるロミオ、楽しみにしてる｣
｢Aさん……俺、頑張ります！｣
｢うん。頑張れ｣
それからは俺がジュリアス役に周り、それからキャラを掴むため図書館で本を借りて寮に帰る。
俺の芝居の事を内緒にして欲しいと頼むと、代わりにまたここで付き合うように約束された。
今日のナポリタン、咲也喜ぶかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1414人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
祐(プロフ) - 時雨さん» お返事が大変遅くなり申し訳ございません。もしよろしければどの話か教えて頂いてもよろしいでしょうか？分かり次第すぐに編集しようと思います┏○ﾍﾟｺ (2018年10月3日 14時) (
レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 役不足っていうのは自分には役目が軽過ぎで満足できないなんて言うときに使う言葉ですよ (2018年9月10日 14時) (レス) id: cf954cb7db (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 漣凪さん» ありがとうございます！今は面白いの一言が続ける気力になっております。むしろ妄想して貰えるなんて嬉しさで爆ぜそうです。頑張ります！ (2018年3月3日 12時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
漣凪(プロフ) - とても面白かったです！ついつい自身でこの先の展開を妄想してしまいます(←変人)。更新頑張ってください (2018年3月3日 1時) (レス) id: 87e449a00b (このIDを非表示/違反報告)
Syu(プロフ) - 茜さん» ありがとうございます！文字数制限に毎度ひいひい言っておりますが頑張ります (2018年2月25日 21時) (レス) id: 71340f3351 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：祐 | 作成日時：2018年2月23日 1時
