検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:16,806 hit

5話 ページ5

手当を終えて、男達が琴音の持ってきた服に着替えたあと。ゴウンゴウンと古い洗濯機(なんと二層式である。祖母の代から買い換えていない)の音に気持ち悪そうな顔をする二人を前に、琴音は怯えた猫のように縮こまり、憐歌はふてぶてしく睨みを利かせていた。


「で。まずは名前から聞こうか」
「……リヴァイだ」
「ミケ・ザカリアス」
「日本人じゃねぇのな。それで、どこから来た?」


その問いかけに、リヴァイとミケの瞳が揺れた。分からないとか誤魔化したいとかではなく、どこと言われても…という戸惑いだ。


「…俺の最後の記憶は、ウォール・ローゼの南西あたりにある家屋だ」
「俺は…壁外だな」
「そうか。私は相沢憐歌。こっちは妹の琴音。聞かれる前に答えてやるが、妹は教師をしている。私は在宅のシナリオライター。年齢は私が二十六、妹は二つ下。この家は私たちの家だ。住所は東京都練馬区〇〇」


色々あるツッコミどころは全てスルーし、彼女は淡々と語った。その横で、琴音が何か言いたそうにモジモジしている。


「で、ここに来た目的は?」
「そんなものは無い。気が付いたら、ここにいた」
「どうやって家に入った?」
「……巨人に食われる…と思ったら、としか」
「巨人…?」


小首を傾げる琴音に、男二人が哀れみの視線を向ける。そんなことも知らないのか、とでも言いたそうな顔だ。その横でタバコを取り出した憐歌が火をつけ、面倒そうに呟いた。


「警察だな」
「…病院じゃなくて?」
「コイツらに保険証があると思う?全額自己負担の、しかも精神病なんざ、いくらかかるか分かったもんじゃない。そんな余裕、うちにはどこにもないだろ」
「それは……そうだけど」
「なまじコイツらが嘘をついてないと仮定して、だ。記憶喪失、もしくは混濁した野郎の面倒を見てやる義理もない。それに、不法侵入には違いないんだ。警察に突き出して、あとはおまかせコースが一番楽だろ。そもそも第一声で『しばらくここに置け』なんて言うこと自体、有り得ん」


辛辣な憐歌の物言いとは裏腹に、琴音はでも、と言い募ろうとする。そんな会話の中に、いきなり男の声が飛び込んできた。


「……おい、それはなんだ」
「……は?」
「それだ。その長方形の、薄い四角いもの」


小柄な男が指さしたそれは、どこにでもある百円ライター。


「……ライターも知らんのか。もしくは覚えていないのかそう見せかけているだけか」
「「らいたあ?」」

6話→←4話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 6.2/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
設定タグ:進撃の巨人 , ミケ , リヴァイ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

カイリ(プロフ) - 結衣さん» 私からも、お知らせありがとうございました。ご冥福をお祈りします (2017年8月30日 21時) (レス) id: e91033920e (このIDを非表示/違反報告)
灯霧(プロフ) - 結衣さん» お知らせありがとうございます。お名前を外させていただきました。リル様のご冥福をお祈りします。 (2017年8月30日 9時) (レス) id: 0aa059a6b7 (このIDを非表示/違反報告)
結衣 - リルは私の友達なのだけれど、この作品が出来た頃に交通事故で遠い空に旅立ったのだからこの小説のことはどうにもできません (2017年8月25日 0時) (レス) id: 12a171e478 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:カイリ&灯霧 x他2人 | 作成日時:2017年5月13日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。