イレギュラー (ページ34)

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六章合宿① ページ34

「というか先輩足怪我してるじゃないですか!?これは……銃痕!?今すぐ応急処置しないとまずいですよ!?」

「そ、そうだね……地味に痛いし……」

「あの……よかったらこれ使ってください」

未果はポケットから一枚のハンカチを取り出し、紫音に差し出した。

「え？これ……いいの？」

「はい。大丈夫です。なにもできなかった分、役に立たせてください」

「……わかった。ありがとう」

「それでは私は失礼します」

未果は紫音にハンカチを手渡すと、その場から立ち去ろうとした。

「待って！未果ちゃん!!」

「……先輩なんですか？」

「ありがとう。俺を助けてくれて」

「え？」

「だってあの時未果ちゃんがやってくれなかったら、俺は今頃死んでたかもしれないし」

「……私は……あいつと戦うとしたけど、怖くて何もできなかった……そんな私にお礼を言われる資格なんてありませんよ」

「未果ちゃん……」

「誰だって戦うのは怖いと思うよ？」

「……え？」

「私いつも戦う時すごく怖い。だって、命を落とすかもしれないし大怪我をするかもしれない。でもそんなんで怯えていたら、多くの人が命を落とすことになるかもしれない。それは私にとって自分が死ぬよりもっと嫌なことなの。それに君は先輩の命を助けてくれたんだよね？私から礼を言わせてもらうよ。ありがとう」

紫音は泰斗の応急処置を終えると、未果にぺこりと頭を下げた。

「……私はただ敵を退けただけですよ？敵は倒さないと意味がないんじゃないですか？」

「敵を退けただけでも十分だよ。私もあいつと戦ったけど、とても敵う相手じゃなかった。無理に戦っていたら犠牲者が出ていたかもしれない。君はよくやってくれた。本当にありがとう」

「まさか……そこまで言われるとは思いませんでした……紫音先輩ありがとうございます。私異能力者になります！私も人の命を助けたいです！」

「……そっか。でも異能力者になるには相当な覚悟がいるよ？」

「大丈夫です!!覚悟ならできてます！」

(未果ちゃん元気になったみたいでよかった。俺も足手まといにならないように強くならないとな～)

泰斗は二人が楽しそうに会話している姿を見て、そう思った。

次回に続く