出身はフランスらしい ページ17
玄関の戸に手をかけたまま、動けずにいた。
『…』
なかなか戸を引かない私を、敬浩くんは急き立てることもなく、静かに後ろで待ってくれている。
『ふぅ、』
息を吐いて、手に力をこめる。
１日ぶりの我が家。
目の前に広がるのは見慣れた景色のはずなのに、やはりどこか余所余所しい雰囲気が拭えなかった。
「…おかえり。」
上がり框に、腰を下ろす私に、そう声をかける敬浩くん。
『…ただいま』
静かに敬浩くんを見上げそう返すと、彼は口元を緩めた。
ゆっくりと靴を脱ぎ家に入る。
「荷物置いたら、大広間においで。」
こくりと頷き、そのまま廊下を歩いていると、仏間から線香の香が漂ってきた。
『…』
1日ぶりの自室に懐かしさを覚えながら、上着をハンガーにかけ、携帯を取り出そうとカバンを開けた瞬間、底に押し込まんだ写真が目に入った。
『っ、』
この写真のことも、話をしないといけない。
ポケットに忍ばせた写真が酷く重く感じた。
ゆっくりと立ち上がり部屋を出る。
縁側を歩く途中に見えた駐車場は敬浩くんとおじさんの車の他に一台止まっているだけだった。
大広間の襖を開けると、携帯を弄りながら煙草を吸っていた敬浩くんが顔を上げた。
おう、と呟いた敬浩くんの手招き誘われ、大広間へ足を踏み入れると、敬浩くんはテーブルに置かれたバケットを指さした。
「啓司くんが腹減ってるだろうからって、これ……なんだっけ、…ブリ、…なんとかっていうやつ」
『ブリオッシュ』
そうそれ！と笑った敬浩くんは、灰皿で煙草を揉み消すと、バケットの中に手を伸ばす。
「Aも食いな？超うまいよこれ！」
もぐもぐと啓司くんお手製のブリオッシュり頬張る敬浩くんの正面に腰を下ろす。
「…パン食べてる場合じゃないって感じだね」
口元に付いた砂糖をぺろりと舌で舐め取った敬浩くんが、私を見つめる。
『おじさんは…？』
「車あるなら部屋にいるんじゃない？」
『…ここに、いると思った』
ティッシュで手を吹きながら敬浩くんが机に頬杖をついた。
「広さんならここにはこないよ。…会いたいならAから行かないとね？」
『…』
諭すような目に見つめられ腰を浮かせた私の腕を敬浩くんが掴む。
「ブリッシュ食べてからいきなよ。啓司くんが泣くよ？」
ブリオッシュ、ね。
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happytaimama(プロフ) - 今晩は。こちらの作品何度も読み返して読ませてもらっています。続きを読みたいので、パスワードを教えていただけますか？宜しくお願いします。 (2月16日 18時) (
レス) id: 4f1df4c5a4 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 感動しました。 (2020年12月16日 14時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
梨紗(プロフ) - もう更新はないのでしょうか……？ (2019年1月25日 23時) (レス) id: 5703e26db8 (このIDを非表示/違反報告)
м i i(プロフ) - 続き楽しみにしています！！ (2018年12月28日 1時) (レス) id: 223aa4411e (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 待ってますすすすby mj (2018年12月24日 18時) (レス) id: 866e6acc2f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：jiu.
| 作成日時：2017年11月22日 11時
