幼馴染の彼は、私にだけ冷たい。《黒》

冷たい…26 ページ26

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「おはようございまーす…って、前澤さん」

『あ、前澤さーん、Aちゃん来ましたよー』







朝からせっせと忙しくする前澤さんが笑顔で、私のもとへ近づいてきた。

まるで私を探し求めていたかのように、きらりとした微笑みで。


『Aちゃん、』と呼ぶその嬉しそうな声と表情からは、なんだか嫌な予感がして、その現実から目を逸らしたくなった。







『これね、僕の結婚式の招待状！』

「…けっ、こんしきの、しょうたい…じょ…、」






前澤さんには、愛しい恋人がいた。

私が前澤さんを想う前から、前澤さんは誰かを想ってたのに。


そんな、爽やかな微笑みで、見つめないでほしい。







『日程の詳しくは書いてあるし、…あ、あの彼氏さんと来てもいいんだよ』






だから、彼氏じゃないですって。

その言葉は、喉に、心臓に、身体中の血液が渋滞してるみたいに苦しくて、ぎりぎりと詰まった。


…失恋というものは、こんなに悲しくて、冷たいものなのか。

前澤さんから受け取った招待状は、ひらひらと私のデスクへと落ちていった。








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