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28.“器”の記憶 ページ31

真っ暗な空間の中で1人、僕は立っていた。
その中で、僕の頭に流れ込んでくる記憶。

『クロム。もしも僕が負けてしまったら、そのときは君の手で僕を殺してくれ』

“僕”は隣に立つ友にそう言う。

クロムは“僕”を真っ直ぐに見据え、はっきりと言うのだ。

『俺たちが運命を変える』

だが次の瞬間、クロムは倒れこんだ。

“僕”の魔法が、クロムの命をうばったから。

『あ……あぁ……クロム……!』

“僕”は両手で目を覆い隠す。

目の前の光景を見えなくするように。

『すまない……クロム……僕は……』

自分が何を言っているのか分からない。

絶望している。
それだけが分かった。

『僕を……殺してくれ……!!』

友を殺めた“僕”を、今すぐ。

頭の中に流れ込んで来る映像は、仲間が“僕”を見て絶望し、死んでいく姿。

誰でもいいから、“僕”を殺してくれ。

「黙れ……!」

もう1人の僕、ルフレの声を黙らせる。
なぜ今になって、お前が出てくる。

だが、それでルフレの声が止むことはない。

この身体は、もう我が乗っ取ったはずだ。
なら何が原因で、お前の意識が出てきたんだ?

『ルフレ!戻って来い!!』

『ルフレさん!帰ってきてください!』

耳障りだ。

『もう……誰も殺さないでくれ……!』

「黙れえええぇぇぇ!!」

僕は声を振り払うように、頭を抱える。

何故いつも、お前は仲間に慕われる。
僕には消えろと言うくせに。

殺してやる!望み通りに!!

それが、破滅と絶望の竜である我だ!

『下僕は嫌だ。友達になろうよ』

また声が聞こえた。

誰の声だ?“器”か?クロムか?

いや、違う。

……あぁ、そうか。君がいたんだったね。

真っ暗な夢から、僕は明かりを目指して目を覚ます。

途端に、顔を誰かに蹴られた。見ると、僕の隣で寝ているリュヌが、僕の顔を蹴っていた。

寝相が悪いにもほどがある。

僕は、僕の顔を蹴っている彼女の脚を退けて起き上がり、フライパンとおたまを取り出す。

カンカンカンカンカンカン!

おたまでフライパンを叩いて音を立てると、彼女は不快そうに顔をしかめる。

「起きろぉ!」

起きようとしない彼女の頬を、両手で思いっきり引っ張る。

「いひゃい……」

「起きろ、朝ごはんを食べないつもりかい?」

朝ごはん、というワードを聞いた途端に、彼女は勢いよく起き上がる。

扱いやすい人間だ。

「ありがとう」

無意識に、僕はそう呟いた。
その言葉は、彼女には聞こえなかった。

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005(プロフ) - とても感動しました!すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした! (2018年4月21日 21時) (レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点! (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リムス x他1人 | 作成日時:2018年3月1日 22時

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