２０.罪深い者 ページ23
「これは？」
私が差し出した指輪を手に取り、まじまじと見ながらギムレーが不思議そうに聞いてくる。
「またキミに会えたときに渡そうと思って買ったんだよ」
私はニッと笑い、もう１つの指輪を取り出す。
それは、私がギムレーにあげた指輪と全く同じものだ。
「キミとおそろい」
そう言って、私が指輪を見せると、ギムレーは苦笑を浮かべる。
「やっぱり、人間のすることは分からないな。同じ指輪を２つも買って楽しいのかい？」
「楽しいよ？キミと同じ指輪だからね」
私がそう言うと、ギムレーは呆れたようにため息をつく。でも心なしか、ギムレーの頬が緩んでいるように見えた。
その様子に、私は顔には出ないように喜んだ。
「じゃあ、少しだけ待っててくれるかな？」
「忘れ物かい？」
ギムレーの問いに私は頷き、部屋を出る。
忘れ物、というほどのものでもないのだが、持っていきたいものがある。
魔導書【トロン】だ。
ルフレさんの部屋に置いてきてしまっているので、途中でルフレさんに会うだろう。
そのときに、別れの挨拶はしておきたい。
「あれ？リュヌ、どうしたんだい？」
部屋の扉を開けると、そこには大量の資料が積み上がった机に向き合うルフレさんがいた。
「すみません、師匠。魔導書を取りに来ましたんですが……」
「魔導書？ああ、これかい？」
ルフレさんは椅子から立ち上がり、棚に置かれた１冊の魔導書を取り出す。
それは、間違いなく【トロン】だった。
「あ！これです！ありがとうございます！」
私はそう言い、ルフレさんから魔導書を受け取った。
別れを言うなら、今しかない。
「あの、師匠……」
「君に会って、もうかなり経ったね」
私の言葉を遮るように、ルフレさんが言う。
ルフレさんは後ろを振り向き、窓を外をジッと見つめている。
「正直に言うと、最初はただの暇つぶしみたいなものだったんだ。でも、君は教えるたびに強くなるものだから……僕にとって、君との時間はとても貴重なものだったんだ」
ルフレさんはそう言い、顔だけをこちらに向けた。その目は、とても寂しそうだった。
「もしもまた何かあったら、いつでも帰っておいで。ここは、君のもう１つの居場所だから」
「……！はい！！ありがとうございました！」
私はルフレさんに深く頭を下げ、部屋を出た。
分かっていた。この自警団から、ルフレさんたちから離れることは。
でも、それを哀しいと思う私は、罪深い人間なのだろうか？
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005(プロフ) - とても感動しました！すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした！ (2018年4月21日 21時) (
レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点！ (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リムス x他1人 | 作成日時：2018年3月1日 22時
