１９.引き分け ページ22
『キミがいないと、寂しいよ。だってキミは、私の友達だから』
風呂の湯に浸かりながら、リュヌが僕に言った言葉を思い出す。
『私はキミが必要だよ！邪竜でも、ギムレーでもないキミ自身が！私と友達になってくれた、キミが大切なんだよ』
邪竜でも、ギムレーでもない僕……か。
生まれて初めて、そう言われた。
僕の周りにいた人間はすべて、僕が邪竜であるが故に従っていた。
だがリュヌは、僕自身を見ていてくれた。
だからだろう。僕が君に惹かれたのは。
「あ、ギムレー。もう寒くない？」
風呂から上がり、服を着替えた僕に、リュヌはからかうように聞いてくる。
先ほどの言い争いが、嘘のようだ。
「ああ」
僕はそれだけ言い、適当な椅子に座る。
僕の様子に、リュヌは前と変わらない笑みを浮かべて、僕の前にある椅子に腰掛ける。
「ねぇギムレー、チェスでもしない？」
「また完敗したいのか？」
僕が言っても、彼女が聞かないのはもう知っているので、仕方なくチェスをする。
しばらく彼女とチェスをしていて、気付いたことがある。
前にやったときに比べ、かなり腕が上がっている。前回は目の前のことにしか対処出来ていなかった彼女だが、今では先を読み、早めに対処をして攻めに入る。
下手をすれば、僕が読み負けするだろう。
僕らはただ無言で、チェスの駒を動かす。
外からは雨の音しか聞こえないこの小さな部屋で、駒を置く音だけが唯一の音。
「……」
「ステイルメイト、か」
まさかの、引き分けになった。
面白い。たった短期間でここまで成長していたことに驚いたが、それ以外に楽しかった。
相手が、リュヌであったから。
「さすがだね、ギムレー。やっぱり、また勝てなかったかぁ。でも、次は負けないから」
そう言って、彼女は笑う。
それにつられて、僕も笑った。
だが、僕は気付いていた。
彼女が、片腕をずっと庇っていることに。
そしてその腕は、僕が斬りつけた腕であることにも。
それでも彼女は、平然を装う。
それが君のいう、気遣いというものなのか？
分からないな、人間のすることは。
「僕はそろそろ帰るよ。君はどうする？」
僕と来るか、クロムたちといるか。
僕の問いに彼女ははっきりと言う。
「もちろん、付いていくよ。希望の道も、絶望の道も、キミの背中は私が守る」
彼女はそう言い、懐から何かを取り出し、僕に差し出す。
それは、三日月型の石がついた指輪だった。
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005(プロフ) - とても感動しました！すごくシリアスな展開からのハッピーエンド素敵でした！ (2018年4月21日 21時) (
レス) id: 1fcd95cf50 (このIDを非表示/違反報告)
やまたこ - 面白かったです100点！ (2018年4月16日 7時) (レス) id: 4e05d1b0ac (このIDを非表示/違反報告)
リムス(プロフ) - 書き人知らずさん» こちらこそ、コメントをくださりありがとうございました。この物語を読んでくださり、ありがとうございます。 (2018年3月23日 12時) (レス) id: 27e40c194f (このIDを非表示/違反報告)
書き人知らず(プロフ) - 感動する物語をありがとうございました。 (2018年3月23日 11時) (レス) id: bdbb5f59e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リムス x他1人 | 作成日時：2018年3月1日 22時
