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"ナックル丘陵は終日強い雨。キャンプをする人は服装に注意、または街に泊まるとよいでしょう。げきりんの湖は激しい吹雪となり、数日続く見込みです。ギャラドスの個体数が平均観測値を超えたため、入域規制がかかる見込み。巨人の帽子は…"
『ナックルの丘はずっと大雨。キャンプの時は服に注意、または街に宿泊する。げきりんの湖は強い、えー…なんだっけ、氷の嵐の、』
『吹雪かな』
『それだ』
『吹雪、そんなに珍しい?』
『少しな。けどあそこのポケモンはみんな強いから。他と同じ天気でも制限かけたりする』
最近ようやく慣れたテレビからは、ワイルドエリアの天気予報が絶えず流れてくる。不意の荒天に備えたい街の人は多く、どの時間に見てもだいたいどこかで放送しているらしい。キバナの古代語が音声に追尾してくれて、自分の理解がそんなに間違っていないのにほっとする。
ナックルの街が接している地域の予測が一通り終わり、エンジン側の簡素な紹介に切り替わる。見張り塔の天気は、ナックルと同じ穏やかな晴れ。今日のパンケーキ、塔でのお茶会のみんなにもご馳走したいな、とふと考えた。最後の一切れをヌメルゴンお勧めの味で終わらせて、食後の紅茶で一息つく。同じようにカップを掲げていたキバナは頭上にビックリマークを出して、スマホロトムで何かを調べ始めた。
「そういえばさ、今度ナックルジムに来ないか?なんやかんやあったからすっかり忘れてた」
「同い年くらいの女の子がいるんだっけ。行きたいけれど…忙しくないの?夜の見回りとか」
「それは持ち回りで毎日やってるから大丈夫。今のうちに来てくれた方がこっちは都合いい。そろそろ…、あ、丁度特番はじまるな」
大人しかった口調の天気予報が終わって一転、勇ましい曲と共にどこかの大きな広場が映り、ダンデさんが画面の中央に登場する。ポケットモンスターの世界へ、ガラル地方へようこそ!と勢いよくモンスターボールからヒトカゲを出して、ポケモンバトルの楽しさを力説しながら堂々と闊歩する。以前会った時とは随分雰囲気が違う、好戦的な金の瞳がこちらをわし掴むように真直ぐに向けられる。気圧されて思わずキバナの方を見れば、同じような鋭い目つきをして呼応するように映像に食い入っている。
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2023年3月21日 20時