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自分の意見をそれは名案とばかりにうんうんと頷いている。背景でボール遊びに飽きたオノノクスがバトル?れんぞく??と目を輝かせているのが見える。二人だけのクローズドな会話とはいえ、堂々と本音を隠しもしないところはダンデらしい。
「それ、問題のトレーナーレベルじゃお前に勝てっこないってわかってる?」
「当然だ。だがそもそも強くなるために犯した罪だろう?そんなものに頼らなくてもチャンピオンになれると分からせればいい」
「つまり絶対的に勝てない相手に向かって、あらゆるズルを自分で封じさせると。で、終わりどきは?」
「…オレに勝つかオレが納得するまで?」
無理。
多分オレでも無理。ダンデの眼力もといバトル欲を真正面から受けるだけでも相当の覚悟がいるのに、償いなんて余計なものがついてきたら、それこそトレーナー存続の意志ごとあっという間に消し炭になるのがオチだ。チャンピオンとしては何も間違っちゃいないが、指導として厳しすぎる。
「お前の公正すぎる目と思い切りのいいアタマん中、たまにむかつくわ…」
「ははは、ヤケ酒にはいつでも付き合うからな!俺だって、ポプラさん達のように職務然と言ってのけるのはまだ時間がかかる。だからこうやって会議にかけて審議するんじゃないか。ヤローも言っていただろう、一人でダメなものは皆で考えればいい。スタートーナメントと同じさ」
ひたすら己だけに向き合っていたダンデはブラックナイトを経て、強さの道に他者の存在を望んだ。それ以来、素直に周りに助力を求める姿を見ることも多くなった。バトルタワーのレンタルポケモンの技構成なんか、ジムリーダー総出で何回頭をひねったか。すじがねいりのテクいジュラルドン、オレの睡眠不足のたまものだ。
無意識に自分は意固地になっていたのかもしれない、と思い直す。Aを守りたいのは事実だが、それによって窮屈な思いをさせたい訳では勿論ない。一人で考えてどうにもならなければ、他人を頼る。昔からダンデよりかは理解しているつもりだったが、いつの間にかひっくり返ったらしい。
会話が終了し、ヘッドホンを外して目元を揉んで疲れをほぐす。気分転換にシャワーをひと浴び、急いでジムリーダーキバナを作り直す。もう約束の時間まであまりない。Aを自分の牙城に招いたからには、弱い所など微塵もない、カッコいいオレさまでなくてはならない。少しでも彼女が頼りやすい存在であるように。
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2023年3月21日 20時