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街中はバトルも少なく、一人と一匹の中の良さを見ればまさか野生とは思われないだろうが、それでも可能性があることには違いない。残ったものさえまた失うかもしれないという恐怖を、再び彼女に味合わせるのか。それでもきっと気丈に笑顔を作って、怯えながらもそれを周りに悟らせないように、何でもないように暮らすんだろう。そんなことは勿論させたくないが、だからといって自分は何がしてやれる。解決策も、それに至る道筋も未だ見つからない。うまく言語化できない苛立ちに方々愚痴を漏らしても収まらず、こうしてライバルにまでフォローされる始末。カブさんやポプラさんには、相当ガキの癇癪に映ったに違いない。
「…わるい、取り乱した。一人で考えてもこんな感じで煮立っちまって、実地畑の意見を貰いたかったんだ。とにかく、おまえも混ざってくれて構わない。どこかで時間がほしい」
「近日中に必ず手配するようにする。…そうか、そうだったな。オレは根っからポケモントレーナーだから、そんな悩みがあることすら気づかなかった」
「オレもだ。普段トレーナーばっかり見てるからなぁ。今回はまあ、あんまりAの持ち物が少ないんで、気付けたんだと思う」
今の時点でこれ以上の進展は望めないし、もう考えるのはやめようと再度背もたれに全身を預けて力を抜く。ロトムが控えめに揺れながら前に出てきたのでタッチしてやれば、もうまもなくのジム来訪者のリマインドが入っている。なんてこった、会議終わりの一服で執務室の掃除のひとつでもしようと思っていたのに、時間が経つのが早すぎる。ジムトレーナー達にはあらかじめ伝えてはあるものの、こればかりは自分が応対しなけりゃ始まらない。
「来客か?」
「そ。それも当の本人のな。こっちが忙しくなる前に、街ン中だけでも知ってる所増やしとかねえと」
「そちらのケアも順調といったところか」
「まだまだ、道半ばってところだな。あー、オレもヤローんところのウールーに交じって、新入りをガツンと躾けてやりたいわ」
「全く、ドラゴンタイプの恨みを買うと怖いな。ターフジムに任せて正解だった」
「…ホップがAと同じ立場だったら、おまえならどうしたよ」
「ホップが?…そうだな。朝から晩までオレとのバトルをさせて、一戦毎に自分の誤っていた行動と、それに準じたポケモントレーナーの心得を宣誓させるかな。心から反省しているかどうかくらい目を見れば分かる」
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2023年3月21日 20時