12_05 ページ16
ナックル宝物庫チームの調査の結果、正式に立ち入り禁止が決定した見張り塔跡地。劣化の度合いから保全も諦め、今後は崩壊した姿が人々の記憶に残ることになる。古の呼び声は永遠に消え、土に埋もれた遺物よろしく現代の人間たちが好き勝手に想像することしかできなくなる。チームの中でも貴重な遺跡の結末を惜しむ声が多く上がり、オレ自身もやるせない気持ちになったものだ。
償いをしたところで、一度壊れたものはもう戻ってこない。A達だってそうだ。定住できる住処、食い物の確保できる生息地、安心できるパートナー…。
「あー、そうだダンデ、今度ソニア博士紹介してくれない?」
「ソニア?構わないが…、今から呼ぶか?キバナの事だから遺跡絡みか」
「いやそんなすぐじゃなくていい…てか今って、向こうも予定あんだろうよ。要件はまあそれもあるんだけど、Aに紹介したくて。知り合いになれたらいいし、遺物研究なら古代語の心得ある友人がいても損はないだろうしな。それと…、あの姉ちゃんの論文読んだけど、無差別ダイマックス事件絡みの野生ポケモンのケアとか、結構手広くやってんのな」
「ああ、強引にダイマックスされた野生ポケモンの扱いは思った以上に難しいらしい。妙な噂がついてトレーナーに追い回されたり、かといって保護したところでなつき度が極端に上がりにくかったりな。そもそも人間に使役されたくない個体もいるから、無闇にゲットする訳にもいかない。不本意に人が関わって自然に戻れないポケモンたちをどうするか。最近の研究テーマの一つだそうだ」
「なるほどねえ。今回のケースはまあ、ちょっと違うが、ケアの方法やらその辺の訳アリたちの保護事例とか聞きたくて」
「…A君のドラパルトの事を言いたいのか?彼女は望んでA君の傍にいると思っていたが」
「それはおそらく間違っちゃいない、が…」
「なんだ、何が気になっている。所在に関しては、希望通りA君の元で暮らすことになったじゃないか。ドラメシヤ達はナックルジムと各協会共同で飼育の上、譲渡先の選定。これはまだ先の話だが…そのことではなさそうだな。何がそんなに不安なんだ」
中途半端な言葉尻を捉えた視線が、こちらを訝しむものに変わっていく。喋りすぎたと気づいたところでもう遅い、こうなったダンデは知りたいものが出てくるまで、しつこい事この上ない。当たり障りのない返答はもう効かないだろう。
141人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2023年3月21日 20時