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「あなたは被害者のケア、ぼくは加害者のケア。それで話はついたはずです」
「分かってるよ。…トップジムリーダーとして、ターフの温情に敬意を。面倒事押し付けて悪いとは思ってるが、頼んだ」
「そうこなくっちゃ。じゃあ、僕も準備があるんでそろそろお暇しますよ。んー、とりあえずは新人用の作業服と備品を揃えなければ、だな。土いじり初心者だし、どれだけ泥んこになってもいいように、いっぱい買いこまんとな…」
ログアウトと同時にスマホロトムが点滅して、メッセージを受信する。普段は簡素な文字でやりとりするヤローにしては珍しい、文面は絵文字だけ。逃げる人と汗のマークの後にウールースタンプ、ウールースタンプ、ウールースタンプ、最後に本人モデルのスタンプが追っかけている。自分と違いこういった遊び機能に疎いヤローの、だいぶ頑張ったメッセージ。思わず吹き出して、燻っていた毒気が少し抜ける。ファイティングファーマーの名は伊達じゃない、いっぱしのポケモントレーナーに相応しくないと判断したなら、本人がファイティングすることも辞さないだろう。
それから間もなくポプラさんも退室して、いつも通りなのか何なのか、ダンデだけが残る。あれこれ言いたげに口を開いては閉じ、適する言葉がなかったのか小さく失笑して頭を搔く。
互いにタメイキ。会議なんかきらいだ、難しいことを難しく言い合って、そのくせあやふやな結果になることも多くて、それに比べてバトルは白黒つくから良い、なんてごねていたのはジムチャレンジ時代のガキだったオレか、アイツか。
「…文化財産の番人としてのキバナ、A君の保護観察者としてのキバナ。どちらの君にも不本意なところはあるとは思っている。だが今の我々では、これ以上の結果は出てこないのが現状だ。すまないが一旦これで収めてくれないか」
「分かってるって。議論を蒸し返したいわけじゃない。方々の立場考えりゃ、それなりの落しどころに決まったと思ってるさ」
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作者名:aks | 作者ホームページ:http://alterego.ifdef.jp/
作成日時:2023年3月21日 20時