Astilbe Ⅱ (ページ31)

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木全翔也#1 ページ31

「聞いてもいい？」

君は何も言わなかったから、ダメって言わなかったから
そのまま質問を続けた

「何であの時、嘘ついたの？」

「「おはようございます！今日はよろしくお願いします！」」

今日は雑誌の撮影やインタビューが何件もあって、朝早くから夜遅くまでずっと撮影が続く予定だ

メンバー全員で大きな声でスタッフさんたちに挨拶をした後、順番に2人ずつメイクをしてもらうことになった

僕は最後の組になったから、時間が来るまでメンバーと話したり遊んだりして空き時間を過ごした

「次の方どうぞ。あ、鶴房さんはこちらに、木全さんはそちらにお願いします」

そう言われて部屋に入った時、すぐに目があった

そして自分の目を疑った

「A、ちゃん…？」

思わず名前を呼んでしまったけど、機材搬入や周りの人の声で上手くかき消されたみたいで、他の人の耳には入っていないようだった

「よ、ろしくお願いします…」

少し辿々しくなりながらもそう言って、案内された方の椅子に腰掛けた

「…メイク、始めさせていただきますね」

そう言ってAちゃん…だと思われる人はメイクを始めた

マスクをしてるから顔半分は見えないし、あまりにも何も言ってこないから、よく似てるだけの人なのか、僕の知ってるAちゃんなのか分からなくて

「あの、もし間違ってたらごめんなさい。名字Aさん…ですよね？」

「…そう、です」

僕のぎこちない質問に、ぎこちない答えが返ってきた

「あの、僕木全ですけど覚えてますか」

思わずそういうと隣の汐恩に、木全なのはわかるやろと突っ込まれた

「覚えてますよ」

そう言ってくれたけど、Aちゃんは向こうを向いていて、顔は見えなかった

そうこうしている間に汐恩の方はメイクが終わったらしく、先行ってるで〜なんて言いながら部屋を出て行った

汐恩についてたメイクさんも部屋を出て行ってしまったから、今この部屋には僕とAちゃんの2人きり

「あの！敬語とかじゃなくて、普通に喋ってほしい…です」

クラスメイトだったのに、敬語で話されるとすごく距離を感じて悲しく感じて

「木全くんも敬語じゃないですか」

Aちゃんは少しだけ笑ってくれて、そう言った

「あっ、じゃあ敬語なしね！お互いに！」

「2人の時だけ、ね」

そう微笑むAちゃんは変わらないのに、その言葉にだろうか

すごくドキドキした