別れの時 ページ6
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それは急すぎる出来事だった。
「俺、事務所辞めることになった。」
『…は?』
目の前にいるのは滝沢秀明。彼は裏方として専念するようになってからその忙しさにどんどん姿を変えていった。
『…なんで。』
「…ごめん」
『謝って欲しいんじゃない。理由を聞いてる。』
「……ごめん…」
『はぁ……』
正直そうなるかなとは思ってた。ジャニーさんにメリーさんが亡くなってジュリーさんがトップにたつようになってから2人は対立するようになったし、ジュリーさんは自分の欲に正直だから経営者としてかける部分があるのも事実だった。そこを補うのはいつも彼の仕事だった。だから余計に疲れたんだろう。でも……
『せめてもっと前から相談して欲しかった……』
『辞めてどうするの?独立するつもり?なにか次にやること考えてるの?』
「とりあえずはしばらく休もうかなと思ってる。」
「でも、やっぱりジャニーさんから教わったエンターテインメントは無駄にしたくない。そこはまだ考えてる途中。」
『…そう。』
言うと思った。ジャニーさんを崇拝してるもんね。
「なぁ…」
『なに?』
「俺がもし独立して事務所作ったら……俺と一緒にやらないか?」
『は?』
「俺はAとエンターテインメントの頂点を掴みたかった。いや、今でもそう思ってる。だから……」
『私は事務所辞める気ないよ。』
「……」
『ごめん。でも、私はこの事務所を抜ける気はない。それに自分の世界は自分で作り上げるし自分だけでしかできない。それがジャニーさんとの約束だから。』
『タッキーと一緒に頂点を目指すのも悪くないかもしれない。でも、私欲張りだから。自分だけの力で作り上げたいの。自分の作品で世界中の人が笑顔になって幸せになれる世界を。』
『だから一緒には行けない。ごめんなさい。』
「なんとなく分かってたよ…苦笑 ごめん。ありがとな。今まで。」
『こちらこそ。たくさんお世話になりました。』
「うん。またな。」
『もちろん。またね。』
生きてる以上別れの時は必ず来る。それは仕方のないこと。でも、人間というのは別れを惜しみ嫌がる。
でも、今回は一生の別れじゃない。別にいつでも会える。
この別れはいい別れだと信じて…
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作者名:ゆる | 作成日時:2023年8月25日 20時