Storm's a moment vol.4 (ページ41)

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transport of joy ページ41

side 櫻井

むせ返る様な、甘い匂いをさせるクチナシ

そう言えば、前々から好きだって言ってたな……。

翔「ー…なぁ、何でクチナシが好きなの？」

『え？……ふふふ、』

翔「んだよ、言えよ」

ちょっと恥ずかしそうに笑う旭灯

その顔に、思わず見惚れてしまう。

何十年付き合おうと、夫婦になろうと、コイツに心鷲掴みにされてんのは

今も昔も変わらない

そう、変わらな……

『ー…初恋の人にね、貰ったから』

ハツコイノヒトニモラッタカラ

え、ちょっと待って、

おおおおおおお落ち着け、櫻井翔

初恋の人に貰ったって………

え、何これ修羅場？

てか何てリアクションすれば良いの、これ

流す？流すか？

こっちから聞いといて、怒るのは絶対違うし

1人固まって、悶々と考えていたオレを見て

旭灯さん、大爆翔！！

お腹抱えて、ヒーヒー言ってるよこの人

翔「……は、…？」

『百面相し過ぎよ、翔さん』

翔「え、いや……その、」

焦ってるオレのすぐ隣に立って、クチナシの花を見つめながら

旭灯が種明かしをしてくれる。

『ー群馬のね、お祖母様のお家に招待していただいた時に、ある人から貰ったの』

群馬の

ばあちゃん家………

翔「……………ぁっ！」

…思い出した………

『音楽学校の受験、頑張れよ、ってくれたの。だーいじな幼馴染みが』

翔「ー…うん、」

『そこからね、クチナシの匂いが私の初恋の思い出』

日本に来る事になった旭灯が、宝塚の音楽学校を受験すると知って

激励したかったから、ばあちゃん家の近くに咲いていたクチナシの花を、旭灯に贈った。

ビックリするくらい喜んでくれた旭灯

後からお袋に、外国ではダンスパーティーに女性を誘う時に、男性が贈る花だって事を随分と揶揄われながら教えられて

スッゲェ恥ずかしかった記憶がある。

翔「…………transport of joy」

『翔さん？』

翔「クチナシの花言葉、喜びを運ぶ……。あの後調べたんだよ」

学校の図書館で、クチナシの花言葉を調べた。

「とても幸せです」

「喜びを運ぶ」

「洗練」

「優雅」

偶然目に付いたから、贈った花は

思いがげずに、オレの隠れた好意も一緒に旭灯に運んでくれていた様で

競争率ハンパじゃない勝負に、見事に勝ってオレの隣に旭灯が居る。

翔「ー…ありがとな、」

旭灯にも届かない様に、小さな花に呟く。

喜びを運んでくれて、ありがとう。