初恋とココア【黒羽快斗】

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トイレに立ったほんの数分。


その数分間に、一体何があったというのか。




───────ドアを開けたその先では、快斗と青子ちゃんが………キスを、していた。



快斗はこちらに背を向けていて、その瞬間ははっきりとは見ていない。


だが、青子ちゃんが少し背伸びをして目を瞑り、そのうえ二人の体は密着していた所から考えれば確実にあれはキスだ。



「っ………」



……浮気だ。


瞬間的にそう思った私は、生憎本人たちとバトルする程強くはない。


二人がこちらに気付く前にそっとドアを閉め、快斗の家を飛び出した。



街灯が淡く照らす道を夢中で走り続ける。


宛なんてなかった。


親には遅くなる、なんて言ってしまったから、まだ九時ちょっと前のこの時間に帰っても嫌な顔をされるだけだ。



丁度よくあったコンビニを見つけると、勢いよく開いた自動ドアをするりと抜ける。



スマホを見ると数件の不在着信とメールが溜まっていた。



『ごめん、親に呼び出された』


ありもしないことをたった一文綴る。

それだけのことでも、今の私にとってはかなり精神を削ることだった。



はぁ、と盛大なため息をついてお茶を手に取り暫くそれを見つめる。


隣の棚に目を移し"ココア"の文字を見つけると、お茶を戻してそっちを手に取った。


きっと苦いけれど、今はそれくらいが丁度いいのかもしれない。

そう思ってレジへと向かう。




失恋なんて、初めてだった。


何せこれが初めての恋だったのだから。



お金を払い外に出て、寒い空気の中に白くて生暖かい息を吹きかける。


その奥にはキラキラと輝く宝石のような星が瞬いているだけだった。









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