初恋とココア【黒羽快斗】

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「ん……何これ」



郵便受けに溜まるいくつかの大きいチラシやら何やらを取り出していると、一枚の小さな紙がひらりと滑り落ちる。


しゃがんで取ろうとするも、強く吹いた風で遠くへ飛んで行ってしまった。



「……ま、いっか」



どうせクリスマスケーキとかチキンとかのチラシだろうし。


特に気にも止めず、一目散に家のこたつに入った。



テレビを点けると、ニュースもCMもクリスマスのことで持ち切りだ。


……縁がなくてすっかり忘れていたが、今日はなんとクリスマスイブだった。


道理でカップルが異様に多く歩いている訳だ。


どうせなら快斗と一緒に過ごしたかったな、なんて考えながら無意識にもLINEを開く。



悲しくも快斗からのメッセージは何も来ていなかった。



深いため息をついて寝転がる。


あのまま白馬くんと一緒にいるのもまた、アリだったのかもしれない。


クリぼっちどうし、仲良くしていれば良かった。



だんだんと重くなる瞼には逆らえず、いつの間にか私は眠ってしまっていた。









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がたん、と音がして、目が覚める。



むくりと起き上がって電気のついていない部屋を見渡すと、見慣れない大きな影が動くのを見つけた。


少しずつ、頭が冴えてくる。



「だれ……っ」



こたつの天板に置いてあったテレビのリモコンを持ち、いつでも戦えるように身構える。



窃盗とか何かだろうか。


よく目を凝らすと、その影は片手に何かを持っているようにも見えた。


もしかしたら包丁……いや、銃かもしれない。


日本も随分と物騒になったもんだ。



せっかくのイブなのに。


明日は待ちに待ったクリスマスなのに。


明日になれば、プレゼントが届いているかもしれないっていうのに。


私の命は、ここで尽きるのだろうか。




もっと快斗と話したかったし、もっと長く一緒にいたかった。



なんでいっつも、私の恋はこんなにも苦いのだろうか。









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