初恋とココア【黒羽快斗】

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あの後、私たちは連絡先を交換してお開きとなった。


まだ唇に残るキスの余韻に浸りながら家のこたつで蜜柑をむく。


蜜柑のこの鮮烈な味と香りは、口に入れた途端に私を幸せで優しく包み込んだ。



蜜柑を三粒一気に口に放り込み、ピコンと控えめに通知を知らせたスマホを手に取ると珍しい人の名前に目を見張る。


どうやらその人は快斗経由でメッセージを送ってきたらしい。



『Aちゃんと話したいことがあるんだ。今度お茶でもどう？』



なんとその人は高校時代に可愛いと密かに噂されていた、中森警部の娘─────中森青子ちゃんだった。









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「ここのハムサンド、すっごい美味しいんだよ」



久しぶりに会う青子ちゃんとの再開の場所は、最近見つけたこの喫茶ポアロを選択した。


ここはもうすっかりお気に入りの場所となっていて、いつか快斗にも紹介したいと思っている。


「イケメン店員さんもいるからオススメだよ」と声を潜めて言えば、青子ちゃんは綺麗な顔を上手に使って笑って見せた。




「……それにしても久しぶりだね」


運ばれてきたハムサンドをかじれば、意図せずとも笑みが零れる。


しばらくの間、私たちは夢中でハムサンドを食べていた。



そして白い皿の上に何も残らなくなったとき、不意に青子ちゃんの澄んだ優しい声が店内に大きく響いた。



「……ごめんね」



少しだけ掠れて音になったその四文字は、何に対しての謝罪なのかも分からないのに、私にひどく罪悪感を感じさせた。


声を出したくとも、上手く出せなかった。




「快斗から聞いたの。あのクリスマスの日の事と、その後のこと」









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