アンジュ・エ・デモン 2nd

95 ページ45

スティック野菜のバーニャカウダーとか、ペンネとか、一口で食べられそうな、できるだけ上品に食べられそうな物を選ぼうとメニューを相談する。







だけど上の空の流星くんからは、気の無い返事しか返ってこない。



どうしたんだろう？自分から今夜誘ったくせに…ともちょっと思ったけど、疲れてるのかな？

仕事で嫌な事があったとか。








「どうかした？今日ちょっと変じゃない？」


「…そう思う…？」









そう思うから聞いてるのに。


わけがわからなくて、綺麗な色のカクテルを口に含んで気を取り直す。


うん、甘い。味知らなくて名前が可愛いから頼んだけど、さすがに一杯めにするには向かないかも。









「…いつも思ってたんだけどさ」


「ん？」


「Aちゃんて、俺といて楽しいの？」


「……何それ、どういう意味？」


「じゃあ、俺といるAちゃんて全部素なの？」








ほんとに、意味がわかんない。



だけど流星くんといる時は、本人からも周りからも不釣り合いに思われたくなくて必要以上に気をつかってる部分はある。








可愛い物を飲んで、綺麗に食べられる物を選んで、お洒落なお店探して。

もともと私服はラフだから、手持ちの中でも出来るだけ女の子っぽいのを選んだ。









別に、その努力はそれなりに面白いし楽しい。

だけど流星くんからしたら、無理してるように見えるのかな？









「楽しいよ。どうしてそんな事言うの？」


「………俺よりも、側にいて楽しい人いるんじゃないの？」


「は…？」








それって、まさかとは思うけど…例えば誰とか言いたいの？








答えられないでいると、流星くんはため息を小さくついて、伝票を掴んで席を立った。








「ごめん。今日、体調悪いから帰るね。本当にごめん」







そのままお会計をして一人でお店を出てってしまった後ろ姿を、固まって見送る事しかできなかった。

96→←94

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す