勇気ーRen ページ6
「…はぁ……」
昼休み、屋上庭園のベンチでひとりため息をつく。
ため息って幸せの妖精死ぬんよな…。
今日だけで何匹死んだんやろ。
そもそも俺はなんでこんなにため息ついてるんやろ。
今朝、Aさんはいつもと同じようにおはよう言ってくれて、朝食と弁当も用意してくれて、キスもして出掛けた。
昨日の朝と変わらん姿。
安心したらいいはず。
せやけど俺は…
平野紫耀とどんな話をしてきたのか、何をしてきたのか、
会ったことを知ってしまったからには気になって仕方ない。
忘れようとしてたのに思い出してしまった。
写真の中にいたAさんの笑顔。
砂がついた水着姿で平野紫耀に肩を抱かれ、頬を寄せ合い、安心したように微笑んでいた。
…俺は、見たことのない笑顔。
思い出すだけで胸が締め付けられる。
結局、無視することなんてできんってこと…なんかな。
平野紫耀の件をはっきりさせた方が、俺もAさんもなんの憂いもなく前へ進んでいける…
そう考えていいんやろうか。
自信が持てへん。
なんて情けないんやろ。
「…勇気が欲しい」
つぶやきながら空を仰いだ。
灰色の冬の空に、吐いた言葉も白い息も溶けていく。
同じように、この心の中にあるつかえも溶けてくれたらええのに。
「どーしたよー？」
突然背後から聞こえた聞きなれた声に思わず振り返った。
「背中から哀愁漂ってましたけど？まさかのマリッジブルー？」
長妻は俺の隣のベンチに腰掛けると顔を覗き込んできた。
変なところで勘のいい奴やな…。
「別に？最近残業続きやったから疲れてるだけ」
「本当にー？」
「本当」
嘘も方便。
ながつにほんまのことなんて話せるわけない。
ながつが一番仲良くしてるゴシップ誌担当の先輩に口が滑ったら大変なことになる。
信用はしてるけど…。
安井さん、人から話聞き出すの上手いからなぁ…。
「なぁーんだ、てっきり悩んでるかと思ったのにー」
「なんでそんなに悩んで欲しいねん」
「いやぁ、永瀬は未だに謎が多いからねー！悩みを聞くことで内面を知りたいんだよ！」
「もう永遠に謎のままでおったらええ」
「ひでぇ！」
ギャハハと笑うながつにこっちの顔まで緩む。
悩んでそうな人間に単刀直入に聞くなんて、長い付き合いやからできること。
それと、ながつやから。
羨ましい。
俺もこんな風に聞けたらいいのに。
やっぱり、勇気が欲しい。
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愛 - 続きはまだでしょうか？急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです！更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです！更新頑張ってください！！ (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2018年10月22日 8時
