本音２ー長妻 ページ38
永瀬は、俺に背を向けて夜空を見上げていた。
「なんで大丈夫でいられるんだよー
あんっなに好きだった人から自分から離れるなんてさー、
Aさん、本当に素敵な人だっただろー、
結婚するって言ってくれたのになんでだよー、
俺が全然納得できないんだよ」
その背中に向ける言葉が止まらない。
一度飛び出た言葉に糸で引っ張られたかのように次々と本音が飛び出してくる。
「俺が悔しいよ。
大学のときから好きだったんだろー？
なんであきらめちゃったんだよ…」
「ていうかAさんがひどいよ。
ずっと頼っときながらさぁ、結婚する直前に別れるなんてさぁ」
「Aさんは何も悪くない」
キッパリ言い切ると振り返った永瀬はまっすぐに俺を見つめた。
微塵もブレない、強固な意志を感じさせる視線に酔いながらも身が竦んだ。
けれど、それは一瞬のことで、永瀬は俺から視線を外し、小さく息をつくと、口元に笑みを浮かべた。
「ごめんな、ながつ」
「俺もちゃんと幸せになるから、そんときは祝福してな？」
それだけ言うと、また空を見上げた永瀬。
整った横顔からはなんの感情も見えてこない。何を考えてるんだろう。
もし、俺がエスパーで人の心を読めるとしたって、永瀬の心だけは読めない気がする。
いつも平気で軽口を叩くのに、核心には触れない。そんな奴だ。
笑ってくれたことに安心して気が抜けたからか、
どんどん瞼が重たくなっていく。
「おーい、ながつ。寝てんのか？…ながつ？ほんまに寝たんか…もう、ほんまに…」
聞こえてるけど、返事をする気力がない。
完全に落ちた。
暗転する景色の中で微かに聞こえた声。
「俺は…あの人の中で一生消えん存在になれた。
それだけで、充分なんよ」
この言葉が現実か虚構か判断する間もないまま、夢の世界へ入っていく。
けれど、夢うつつに、これまで胸につかえていたものが薄れていくのを感じた。
そうか。
永瀬の中には、Aさんにとって自分が一生消えない存在になれた確信があるんだ。
確信を持たせる何かが二人の間にあったんだ。
その確信はこれからの永瀬を支えていく…
それなら俺は、永瀬を見守るよ。
幸せになる姿を見届て、祝福する。
「絶対に、、幸せになれよ」
「おん」
夢の中で、永瀬は白い歯を見せて笑った。
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愛 - 続きはまだでしょうか？急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです！更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです！更新頑張ってください！！ (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2018年10月22日 8時
