聖なる夜に3ー高梨 ページ23
「彼女は永瀬さんと生きていくことを選びました。紫耀も納得して2人で出した結論です。お互いにもう2度と会うことはないと、私の目を見て言いました」
「…Aさんが…」
「ええ」
永瀬さんは視線を私から外すと息を飲んだ。
彼の胸のうちに何があるのか、心を読むことはできない。
けれど、留まる楔が彼を苦しめるのなら、取り去ってしまいたい。
「過去がどうであれ、文字どおり過ぎ去ったことです。
たらればは、虚しいだけ。
今は完璧に納得できなくても、これから重ねていく年月が変えてくれるはず。
人の心は変わります。
そう信じて、彼女とももかちゃんと、一緒に生きていくことはできませんか…?」
心からの思いだった。
もう、誰にも苦しんでほしくない。
エゴでしかないことなんて分かってる。
それでも、2人が悩み抜いて出した答えを、永瀬さんに受け入れて欲しかった。
変えられない過去よりも、変えられる未来を見つめて生きる方が幸せになれる。
永瀬さんは何も言わずまっすぐな瞳で私を見据えた。
「こんな…いきなり押しかけてきた俺のために時間を割いてくださってありがとうございました」
「いえ。…こちらこそ、紫耀と彼女の関係を知りながら口外しないでくださり、ありがとうございました」
永瀬さんはフッと小さく息を吐くと、
張り詰めたものが消え穏やかな表情になった。
「高梨さん…全然、最悪な人やないですよ」
優しい優しい声でそう言うと、小さく会釈して会議室を出て行った。
* * * * *
永瀬さんは私の言葉をどう受け止めたんだろう。
…あまりにもまっすぐな彼に、正直になりすぎたかもしれない。
「ホワイトクリスマスか…」
外はいつの間にか雪が降り出していた。
街が白く染められていく。
この景色のように、苦しみも悲しみも、すべてが彼女と紫耀と永瀬さんの中から、まっさらに消え去ってくれればいいのに。
そう、願わずにいられない。
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愛 - 続きはまだでしょうか?急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです!更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです!更新頑張ってください!! (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2018年10月22日 8時