転んだだけ ページ10
授業が終わったのか、少し外が騒がしくなった頃。
四葉は廊下へと出て行った。
松陽達を呼んでくるのだと思うと、少し気分が重くなる。
だって皆、絶対に悲しむから。
もう大切な人にあんな顔をさせたくないのに、させてしまうに違いないから。
四葉に呼ばれて入って来たのは、ここに寝泊まりしている4人だった。
四葉の赤く腫らした目で何となくの予想はついていたのか、あからさまに驚きはしなかったけれど、それでも少し目を見開いて、直後に拳を強く握りしめたり、悲しそうな目をしたりしていた。
「A」
松陽に、ポツリと名前を呼ばれる。
凄く凄く悲しそうな表情をしていて、思わず申し訳なさに顔を俯かせた。
「ごめん、」
なさい、と続く筈だった。
それが途中で遮られたのは、松陽に抱きしめられたから。
「ヤンチャにも程がありますよ……生きていてくれて、本当に良かった……」
1回だけギュッとされてから、ゆっくりと離れていく。
「もう、こんな事しないで下さい。心臓が保ちません」
「……うん」
松陽はAの頭を撫でてから、ゆっくり立ち上がる。
次は君達の番ですよとでも言うように、晋助達の顔を見た。
「A。それ、誰にやられた」
銀時が真っ先に尋ねてくる。
でも、何も答えられなかった。
「復讐してやろーぜ」
「『松下村塾』って寺子屋から出てくんの見た事あるぜ」
男達のセリフが、頭をよぎったから。
もしそれを正直に言えば、兄の内の誰かが、絶対に責任を感じてしまうと思ったから。
だからAは、
「山で転んだだけ」
そう言って、曖昧に微笑んだ。
皆が納得していないのが分かるけど、これ以上誰かを苦しませたくなかったから。
244人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆず(プロフ) - 緋澄さん» 1話目ができ次第、公開させていただくつもりです (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 時雨さん» 申し訳ありません、実は、続編は準備しただけでまだ1話も書いていないんです・・・! (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
緋澄 - 続編を読みたいのでパスワードを教えて下さい (2019年6月19日 14時) (レス) id: d02144b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 続編が、読みたいのでパスワードを教えてください。 (2019年6月18日 23時) (レス) id: bfac637d1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年4月5日 20時