諦め悪く ページ24
「ダメだ!」
「何で!」
「危ないだろう!」
「危なくないもん!」
「ダメだ!」
「大丈夫!」
その日言い合いをしているのは、Aと小太郎という、珍しい組み合わせだった。
それを眺める松陽達の顔には、呆れがハッキリと浮かんでいる。
「大丈夫だもん、危なくないもん! もうちゃんと泳げる!」
「そういう問題じゃないだろう! ここは流れが急なんだ。Aは手伝ってくれるだけで良い」
「やだ! 泳ぐ!」
「A……」
事の発端は、つい5分前。
松下村塾は万年金欠のため、塾生の家から譲ってもらったり自分達で採ったりしてきた食材が、立派な戦力となる。
そこで、川へ晋助達が魚を獲りに行こうとしていると、Aが「私も行きたい」と言い出した。
勿論そこまでは良い。一緒に来た。
ところがいざ川に着くと、Aは今度は「私も魚獲りたい」と言うのだ。
松陽も晋助も銀時も、自分達が全力で見守れば大丈夫かと折れたのだが、小太郎だけがいつまでも反対している。
それは意地悪なんかでは無く、心配から来ているものなのだが、Aはそれがとても不満らしい。
いつまでも粘っている。
「A」
このままでは終わらないと踏んだのか、ついに松陽が口を開いた。
「それじゃあ君は、向こうで私と一緒に獲りましょう」
そう言って指差されたのは、浅く、Aでも腰の部分までしか無いような所だった。
「でも……」
「泳ぎたいのなら、別の川へ今度行きましょう、ね?」
「……うん」
本当に渋々、といった様にAが頷く。
「それじゃあA、行きましょうか」
そう松陽がAの手を引いて行くのを、ホッとした顔の小太郎が眺める。
と、不思議そうな表情の銀時が訊いた。
「ヅラぁ、お前、何でんな反対してたんだ?」
「な。いつもはお前が1番に折れんのに」
「A、諦め悪ィからな……」
「だって、心配だろう。こんな所にAが入ったら、頭まで完全に浸かるぞ。流れも急だし」
「まぁなあ……」
少し遠くのAを見て、晋助は苦笑する。
あんなに小さいのが入ったら、確かにそうなる。
「じゃあまぁ、Aは松陽に任せて魚獲るか! お前等、行ってこい!」
「「お前は行かねェのかよ!」」
銀時は泳げない。
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ゆず(プロフ) - 緋澄さん» 1話目ができ次第、公開させていただくつもりです (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 時雨さん» 申し訳ありません、実は、続編は準備しただけでまだ1話も書いていないんです・・・! (2019年6月19日 17時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
緋澄 - 続編を読みたいのでパスワードを教えて下さい (2019年6月19日 14時) (レス) id: d02144b3e7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 続編が、読みたいのでパスワードを教えてください。 (2019年6月18日 23時) (レス) id: bfac637d1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年4月5日 20時