止まない気持ち(yb×hk)Twitter掲載分 ページ45
hk side
俺は雨の日が好きだ。
湿気た紙や、フローリングの湿った匂い。
雨が窓ガラスに打ちつける音が響く。
俺は課題に使う教科書を机の上に広げたまま、
雨の降りしきるグラウンドを見ていた。
『今日も練習できないじゃん』
薮の声を思い出す。
残念そうな声で、唇を尖らせた横顔。
『筋トレだけして解散だな』
サッカー部の奴らと一緒に教室を出ていく背中を見送った。
なぁ、薮。
お前は晴れの日が好きなんだろうけど…
俺は…雨が、好き。
サッカー部の練習場所は、ザァザァと雨が降り大きな水溜まりがぽっかりとできていた。
片付け忘れたサッカーボールが、水溜まりにぷかぷか浮いている。
いつから俺は、お前のことを目で追ってしまっているのだろう。
叶わないって、わかってるのに。
あのボールのように、俺の気持ちを水溜まりに投げ込みたい。泥だらけになって、忘れ去られて、そしていつかカンカン照りの太陽に晒されて乾ききってしまえばいい。
そう思いながらボールを眺めていると、濃紺の傘が視界の片隅に入った。
あぁ、俺ってどうしようもないな。
傘と靴しか見えていないのに、それが薮だってすぐわかる。
サッカーボールを拾い上げた薮は、部室の屋根の下まで歩き傘をたたんだ。靴箱に置いてあったタオルでボールを磨きだす。
丁寧に、丁寧に。
薮。
今、俺の気持ちをそのボールに詰めて沈めようとしたんだよ。
なんで拾うんだよ…
ボールは綺麗に色を取り戻していく。
磨き終えたボールを片付けると薮はこちらを見上げた。
ぱちり。
…目があった、気がした。
俺だと気づかなかったんだろう。
特に反応もないまま、薮は傘をさしてまた校舎へと戻ってくる。
期待しては、振り回される。
でも、…それでも。
仲のいい大ちゃんじゃなくて、
教え上手ないのちゃんでもなくて。
爐匹Δ靴堂兇函
疑問なんて仕舞いこんで鍵をかけた。
俺は、雨の日の特別な時間を握りしめる。
1ヶ月前から始まった、薮のただの気まぐれ…それでも。
自分から捨てる強さも弱さも持ち合わせていないから。
トン、トン、足音が聞こえる。
「光、いる?
雨で部活が早く終わったんだ。また一緒に課題やろうぜ」
俺が雨を好きな理由。
どうか明日も止まないで。
止まない気持ち*fin
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まや(プロフ) - ちちちさん» ちちちさん、コメントありがとうございます!よくしろくまさんのページでお見かけしていますちちちさんですよね?|´-`*)遊びにきていただけてたなんて嬉しいですっ! (2019年4月27日 20時) (レス) id: b929bba7e5 (このIDを非表示/違反報告)
ちちち(プロフ) - ときめきと切なさと背徳感にキュンとしました!最後のゆとひかのゆーとの色気ったら! (2019年4月26日 19時) (レス) id: 666edffd2b (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - しろくまさん» 大好きなしろくまさんにきゅんとしていただけたなら幸せですっ(´∩ω∩`*)ありがとうございます! (2019年4月26日 1時) (レス) id: b929bba7e5 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - まや様、Twitterのやぶひかお話しを上げて下り、ありがとうございます。改めて読ませていただいて、きゅーん(//∇//)やっぱりまや様の学園物は鉄板ですね…!! (2019年4月25日 8時) (レス) id: f22c03c885 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - ねね子さん» 来て下さってありがとうございます(*´˘`*)どうも薮くん病み気味です(笑)ねね子さんに褒められるなんて嬉しすぎます〜(//∇//) (2018年9月30日 22時) (レス) id: 66cf309f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まや | 作者ホームページ:http://ma-no homepage
作成日時:2018年6月5日 21時