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そうか。彼らはただの野次馬じゃない。
己の信じるヒーローの顔を見にきていたのか。
『…まさか、感謝されるとは
まあいい
なら、どうか聞いてほしい』
郁の言葉に、一瞬でまた静まる。
『今この瞬間
たくさんの人が苦しみ、そして耐えている
憎しみを抱え、いつかの復讐を心に誓おうとしているかもしれない
けれど、決して僕のようにはならないでください』
郁は隣にいたらしい翼を可視化させた。
翼は周りを見渡し、そっと郁の手を繋ぐ。
生と死が分かつ双子の兄弟があの体育祭の時と同じように全国へ流された。
2人は目を合わせると、郁は涙をその頬に落とす。
『あの男を殺せば、何かを得られるかと思っていた
あの日から心に降り続けている雨が止むと思っていた
なのに…何もないんです
快感も解放感も喜びも、何もない
殺した先は…また無だった
っ何も、誰も変わらない！
だって…
_______奪われたものはもう返ってこないから
だからもう一度言います
あなたは僕のようにならないでください』
郁は今まで見せたことのないくらい、優しく微笑んだ。
『あなたが憎む人間と同じように手を汚す必要はない
今日のことで政府は何らかの動きを見せるでしょう
もし動きを見せなければ、世間の声が動かしてくれます
僕がこんなことを言うのはおかしいけれど
今はじっと耐えてください
辛く、寂しく、悲しく、虚しく…生きたくなくても
あなたを助けてくれる人が現れる
僕にもきっと手を差し伸べてくれた人がいたけれど
僕はその手を取ることができなかった
あなたのその胸の痛みが
いつか何か他の形へ変わることを願っています』
その言葉と共に郁はゆっくりと目を瞑った。
無抵抗を表すように、誰かを胸の中に呼ぶように手を広げて。
『裁かれるべき者を裁いてくれる法を
大切な人のいない世界に残されることのない世の中を
僕は求めます
抵抗はしません
僕を正義と呼ぶ声がある今
僕を殺してください、ヒーロー』
目を瞑る郁に、翼は涙を流した。
涙は落ちても地面を濡らすことはない。
翼「ごめんな……
ずっと…1人に、させて……
最後は、俺が終わらせるから
郁、俺の弟…」
『翼…そう言ってくれるのを待ってたよ』
翼「……郁、これで、…幸せになれるんだよな？
郁は、もう悲しまないよな？」
『泣かないで、翼
僕がずっと望んでいたことなんだから
今度は、僕が翼を殺すよ』
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ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
