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郁の言葉にここにいる人間もが惹き込まれていく。
いつかの支配者が思想を語った時のように今この瞬間、国民全体が彼の言葉に耳を傾け共感してしまっているのだ。
『小さな子どもを轢き殺したのに権力で揉み消した者
女性に暴行を加えたのに証拠不十分で無罪になった者
他にもたくさんの罪を償うべき者たちを僕は殺しました
そして…
___________僕の兄を殺した男を殺しました』
…そんなはずはない。
あの男はヒーローを数人付けて別の場所に待機させている。
なのに…
『そこにいたヒーローたちには僕の要求を聞いてもらえなかったので少し眠ってもらっています
直に目が覚めるでしょう
流石に殺す瞬間を放送するのは気が引けますから』
たった今現場に配置されていたヒーローから連絡が入った。
…あの男はすでに絶命していた。
今までと同じく酷く苦しんだ様子で。
『僕はたくさんの人間を殺しました
けれど自分を必要悪だなんて正当化するつもりはない
世間では悪とされていても
僕は自分の正義を信じ
“奪われた命”
“奪われた未来”
“奪われた希望”
のために殺しました
全て、僕の私欲だ
僕はヴィランです
他のヴィランたちの何も変わらない
決してヒーローなんかじゃない
僕は、犯罪者を殺した犯罪者です
そして僕の要求は一つ
僕を殺すこと』
ヴィランを殺すなんて正当な理由でしょうと、郁は柔らかく笑って見せた。
『殺してもらえないなら死ぬまでこの殺人を続けます
被害者を増やすか、加害者1人を殺すか
答えは簡単です』
「彼を殺さないで！！」
野次馬の1人が声を上げた。
みんながその人に目を向ける。
「彼は私の娘の仇を取ってくれた！
彼がやってくれなければ私がこの手で殺してやろうと思っていました
国は娘を殺した男を守るばかりで何もしてくれなかった…
あなたは私の正義です！
誰がなんと言おうと私はあなたに感謝したい！！」
涙ながらに声を上げるその人に続いて、また1人また1人と声を上げていく。
「俺もだ！！
法は…俺の息子をいじめた末に殺した奴らを罰してくれなかった
おふざけが過ぎただけの事故だって…
苦しんだ息子のことなんて何も考えてくれなかった…
だが、きみが殺してくれた
ありがとう…息子を殺した奴らに罰を与えてくれて
ありがとう！！
ずっと礼が言いたかった
俺にとって、きみこそヒーローだ」
一つ一つの声が重なり大きくなる。
皆国や法を憎んでいる者たちだった。
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ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
