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正午。12時丁度に郁は現れた。
たくさんのヒーローや警察がいる国会議事堂の真ん前に自分から姿を表したのだ。
一般市民には外出禁止令が、近隣住民には避難勧告が出されているが野次馬たちが集まってきてしまった。
だが、ザワザワとしていた現場は郁の登場により一瞬でしんと静まり、息を吸う音をたてることも憚られる。
郁はゆっくりと周りを見渡し、目を瞑って息を吸い小さく何かを呟いた。
『___________
今日はお集まりいただきありがとうございます
たくさんのお出迎えとご丁寧にテレビ中継まで
光栄な限りです』
言葉とは裏腹ににこりともしない郁はヴィランと言われても頷ける威圧感があった。
『さて、なんの話からしましょう
質問があるなら受けますが
…て、質問できる状況でもないか
せっかくだから全ての話をしましょうか
まず最近起きている連続殺害事件
ああ、正義のヴィラン事件とも言われてますね
その犯人は僕です』
郁の言葉に一層緊張感が走り空気が硬くなる。
だが、郁は気にした様子もなく話し続けた。
『僕はずっと思っていました
この国の法律は酷く稚拙で何も守ってくれないと
その証拠に今もなおヴィランは存在し続けています
弱者だった僕は、ただ助けられるのを待っていた
ただ変わるのを願っていた
けれど、世の中も法も…人も何も変わりませんでした』
《悪には正義を。法には声を。罪には罰を。》
『当たり前で、当たり前じゃないこの言葉を信じていました
今、人は知るべきです
正義にはたくさんの正義があり
同じように悪にもたくさんの悪がある
自分が悪としても、誰かには正義かもしれない
僕は、それが歯痒かった
兄を殺されて、殺した男に相応の罰を与えられることだけを望んで生きてきました
本来なら自分の手で殺したかった
けれど、それは今の世の中では悪とされる
だから…耐えたんだ
両親を殺したヴィランは不本意な形で勝手に死んでしまったから
今度こそ、僕の思いが届くと思っていた
なのに、法は…僕にとって悪でした
明るく優しくて、いつだって人の輪の中にいて
まるで太陽のような存在だった僕の兄
それが一瞬で消えた
…いや1人の男の手によって消された
あの男は絶対に悪であるはずなのに
国の正義が…悪だと認めなかった
必死に耐えて信じ続けた正義に裏切られたんだ
だから、僕は制裁を与えました
僕の正義は被害者を救うこと
僕は、加害者を救う法を悪だとしました』
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ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
